2021.10.30(2-p.166)

いま万歩計は14,140歩とある。

午前中に試し刷り分のZINE が届く。いい出来。毎回データで見ると無限に直してしまう気になるが、こうして形として出来上がってしまうとなんだか諦めがつくというか、これで完成形なのだと僕の方も騙されるというか、とにかく際限なく直す対象としてでなくこういう本なのだという態度で読み返せるから不思議だ。『会社員の哲学』は僕好みの矛盾や飛躍や混乱に満ちたいいエッセイに仕上がっているんじゃなかろうか。もとは一度本の形で印刷してみて読みながら大幅に直しを入れようと思っていたのだけれど、これはこれでいいんじゃないだろうかと思う。全体の構成の入れ替えや加筆の欲望はだからだいぶ落ち着いたのだけれど、その分冷静になって誤字がぼこぼこ見つかるから、修正自体は必要そうだ。とはいえ、大枠はこのままだろう。来週幕張の本屋lighthouse では、β版として廉価に売ってみるつもり。日記本の方も、ここからの校正がたいへんそうだ。今回の二冊はAdobeの月額制を嫌って買い切りのAffinity Publisher で制作したため、横書きだ。『会社員の哲学』は教科書的なテクストに擬態して作っているからあまり違和感はないけれど、日記本のほうはどれだけ読み口が変わるかまだよくわからない。ちゃんと楽しんでもらえるものになってるといいのだけど。

午後から奥さんとお出かけ。電車の中では『会社員の哲学』を読んでいた。奥さんは『町でいちばんの素人』という本を読んでいて、面白そうな本だった。原宿のラフォーレに始まり、東急プラザを経由して星野珈琲で遅めの昼食。太田記念美術館で暁斎の漫画を観る。蛙が格好良く、亀や蟷螂が可愛く、蝙蝠がたくさんいた。コンドルくんの名前があると、あ、コンドルくんだ、と二人はなんとなく嬉しくなる。暁斎の絵日記のコンドル判子が好きなのだ。それからキデイランドに向かって、エレベーターが四階について開いた途端、奥さんはたまらずトタトタと駆け出して、お目当てのチェック柄ミッフィーの生首にまっしぐらだった。生首はランダムにチェック柄があしらわれていて、何個もの生首を丹念に吟味して奥さんはお気に入りの一つを選んで買った。喉が渇いて麦茶を買う。二人はごくごく飲む。

キャットストリート経由で渋谷へ。元宮下公園跡に出来た商業施設に初めて入った。『放課後ミッドナイターズ』のポップアップショップを冷やかして、奥さんはDVDを買った。それから西武でチベタンタイガーラグを見て、可愛いね、これが敷ける家に住みたいね、と話して満足。マルイに移動してhellbent lab. のポップアップショップへ。すっかり夫妻は顔を覚えられている。今日はパーカーとガマ口を買う。今日明日の渋谷はハロウィンなのでこれから大変かもですね、と話していて、確かにしまったことだった。TSUTAYAの前に警察車両が何台も待機していた。最近は外国からの観光客が多いらしい。すっかり奇祭扱いでたいへん愉快だ。とはいえ巻き込まれるのはごめんだ。すでに日は傾いていたけれど夕飯にはすこし早い。ヒカリエにまで移動して、渋谷◯◯書店をひやかす。こういう棚貸しの本屋は品質管理がべらぼうに難しそうだ。ほどよくチャラついた選書で可愛らしかった。

満足してスクランブルスクエアを突っ切って川沿いを歩いて代官山方面へ。ハブモアカレーで夕食。いつ来ても本当においしい。きょうはアラカルトを試してみたくて、レモンと鰯のパイ包、ラムチーズバーガーと白菜のポタージュを頼んで、カレーは発酵野菜スープのものと豆のミニカレー。ビールとレモンサワーで大満足。奥さんがスパイスカレーに凝り出したのはこのお店がきっかけだったかもしれない、と話していて、僕はユザーンで奥さんはハブモアだったわけだ。表参道からこちらに移転したことでゆったりして嬉しいのだけど、表参道で途方に暮れた時ご飯をどこで食べたものかわからなくなってしまった。あちらはモスバーガーもなくなってしまったし。

お腹いっぱいで、夜の渋谷は近寄りたくなかったので恵比寿まで歩くことにしたのだけど、なんなら恵比寿からのほうが行きやすいくらいだった。帰って長風呂。新刊へのリアクションが全然なくって落ち込んでいたけれど、Twitterの通知を切っていたのだった。ちゃんと反応されていて嬉しい。これから本番の印刷数と値段を考えるのだけど、まったく予想がつかない。どうしようかなあ。パンツがもうないことに気がついて、慌てて洗濯機を回す。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員。プルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、「家」の別のやり方を模索するZINE『ZINE アカミミ』などを制作。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。