2021.11.20(2-p.166)

奥さんの仕事の山場を越えたのでパーッと行こう、と話していた。昨晩はそれで何がしたいか色々と考えていたのだけど、奥さんは山場を越えた疲れでしょぼしょぼで、思考がまとまらない。スパイシーでスペイシーなものが食べたいかも……肉……とにかく洋食でないことは確か……熱海とか行っちゃうか……でも遠出をすると帰り道がだるいのよね……、すっかり夜更けまで悩みに悩んで、限界を迎えてすやすやと眠った。

それで今朝は僕が着荷を待つ午前中に薬の補充などを済ませておいてもらってそこからどこかへ繰り出す想定だったのだけど9時半くらいにはもう新刊の本番印刷ぶんが到着した。今回は二冊同時刊行なのもあってボリュームがすごい。段ボール五箱。「即売レジ」というアプリの整備などを並行しつつ、注文をいただいている書店用と、文フリ持ち込み用を仕分けていく。なんだかわかってはいたけれど、思ったよりも物量があって、全部持ってくのは無理かも、と計画を練り直したりとバタバタしてしまい、結局奥さんにも手伝ってもらってキリがいいところまで終えて、11時半をめどに家を出る。

一緒に買い出しを済ませて、お昼はハンバーグやオムライス。洋食やんけ。

それからなんかちょうどよく鄙びた感じの遊園地、と思って花やしきかな、浅草に出て、すごい人だった。めっちゃ人いるじゃん! と言っている人がめっちゃいた。お前も人だからな。そして僕も人だった。浅草寺には七五三っぽい人たちがいて、あとは日本語が母語でなさそうな人たちのキモノ撮影会みたいなのが盛んだった。十一月は七五三の季節なのだな。花やしきは行列ができていて、花やしきなのに? と混乱した。並びたくなかったのでパスして、フグレンも並んでいて、浅草寺の出店や、軒軒からも、威勢のいい呼び込みの声が聞こえる。人がたくさんいる。みんな生命力が強そうで勢いがある。ああ、そうか。私って人がたくさんいる場所、好きじゃなかったんだった。そう二人は思い出して嬉しかった。静かな浅草が好きだったな。浅草が嫌いになりそう、と勝手なことをいいながら上野まで歩くことにした。途中でコメダで休憩し、お尻に根っこが生えかけた。ブックオフのにおいを嗅いだ。上野で、ヤマシロヤで奥さんは石黒亜矢子のガチャガチャと、等身大のヤモリやトカゲのガチャガチャをした。それからお腹が空くまで占いでもいくかあ、とそれらしい施設に向かいながら調べてみると料金体系がけっこう贅沢なことが知れて、やめよ、となる。ふだん歩かない道だったのだけど「BAR」と掲げたバーを見つけて、もう大人だし、こういうときはバーなのかも。お腹は空いてないし、占いにお金を捨てるよりは、高ッいお酒をちびちびやりながら小洒落るのがいいのかも、と思われ三度くらい前を行き来してからついに入店。とてもいい感じだった。内装の作り込みとかディズニーランドみたいだし。お酒も美味しく、ゆっくり飲み飲み、お喋りをした。今日は歩きながらずっとお喋りをしていた。奥さんとこうして存分におしゃべりするのは久しぶりな気がする。二人とも嬉しかった。あなたがよそでゾンビの話とか楽しくしている間も私は仕事してたからね、と奥さんは言って、そうか、さみしかったのかも、とツルンと毒気の抜けたようなかわいい顔で呟いた。僕も嬉しい。ようやく奥さんが帰ってきた。お疲れ様でした。

駅の近くの蕎麦屋でしょっぱい肉豆腐や揚げ銀杏で蕎麦焼酎。おたがい温かかったり冷たかったりする蕎麦で〆て、帰る。陽が沈むと風が冷たいねえ。

昨日の夜のしょぼしょぼからは考えられないくらい楽しい一日にできてご満悦。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員。プルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、「家」の別のやり方を模索するZINE『ZINE アカミミ』などを制作。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。