日記と作品──『町でいちばんの素人』『会社員の哲学』

※現在品切れ、増刷未定。あとは各書店にある限りです。

※『会社員の哲学』は増補版が新しく出ています。

あたらしいZINEを二冊つくりました。

『プルーストを読む生活』の翌日から始まる日記本『町でいちばんの素人』と、レベッカ・ソルニットみたいな人文の香りのするエッセイを書きたい、という試み『会社員の哲学』。

『町でいちばんの素人』と『会社員の哲学』は互いに独立した本ですが、相補関係にあります。

『町でいちばんの素人』のころの日々に考えていたことが結晶化したものが『会社員の哲学』なので、この日記本はいわば「メイキング・オブ・会社員の哲学」のようなところがあります。併せて読むことで日々の生活と制作との繋がりなんかが見えてくるかもしれません。

今回から制作はInDesignではなく、Affinity Publisherというソフトを使っています。これはサブスクへの抵抗というか、無理なく継続して制作していくには買い切りソフトの方がいいな、という判断からです。ソフトの制約上、文字組みは横書きとなります。

B6版271ページ 1500円(税込)

『プルーストを読む生活』の成功──まだ映画化やアニメ化の話が来ていないので伸びしろはありあまっていますが──のおかげで、勝ち逃げしようかな、という気持ちもありましたが、それ以上に、「もしかしたら楽しみにしてる人がいるかも」という思い上がりが大きくなったので日記本のつづきを出します。

今回はやたらに長大な小説のような、日記全体の背骨のようなものが不在です。なので全体的にふわふわしているかもしれません。

2019年12月から翌年7月までのこの日記本は、ちょうど中間地点に3月の感染症本格上陸が配置され、ただでさえプルーストという背骨を失った生活は、かなり大きな変容の波に晒されてよりブレていく。そのスリリングをお楽しみいただけるかもしれません。この時期の日記本はすでにありふれています。特に社会全体が大きなうねりの中にあるとき、人の言葉というのはどうしても均質的になりがちです。それでも日記というのは個別具体的な誰かの生活なので、他の人の日記とは当然のようにどこか異質なはずです。大きな言葉に呑み込まれそうになりながら、それでもなるべく小さく留まろうとした格闘の記録になったかと思います。

B6版91ページ 800円(税込)

『会社員の哲学』はあくまで自身の生活から乖離しない程度の抽象度で考えていくことを自分に課した本なので、ページに残る悪戦苦闘やその失敗から、日記に書かれた日々が思い起こされるかもしれません。

『プルーストを読む生活』が自分の想像以上の広がりを見せてくれて、だからこそ日記ではない、ひとまとまりの作品をつくらないとな、という思いが強くありました。

日記はミックステープのようなもので、僕にとって作品とはコンセプトアルバムみたいなものだという感覚がつよくある。

製作していく中で、アルバムを一枚、世界観をひとりで構築するだけの力は自分にはないなということがよくわかりました。今回のZINE『会社員の哲学』はデモ版です。このZINEがよき編集者の目に留まり、完全版『会社員の哲学』の制作の伴走者となってもらえたら、と都合のいいことを思い描いています。

そのほか校正や校閲もきちんとしたいし、装いももっとおしゃれしたい。『会社員の哲学』は、今後誰かと共に作る本へと変容していくことを期待しています。

もしご関心のある方がいらっしゃいましたら、akamimi.house@gmail.com までご連絡ください。

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柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。