2020.12.16(1-p.365)

二人して明け方前に目が覚めてしまって、すこしの間ハキハキとお喋りをしていたが、気がついたらちゃんとうとうとしていて、起床はギリギリになった。

ギリギリのはずだったけれど元の予定がかなり余裕で、のんびりとグランスタでフルーツサンドを買って食べたりできた。

新幹線では『山學ノオト』。この速さで移動する箱が久々で、三半規管がすぐ弱る。酔った。

改札の外で母が待っていてくれて、ランチをどうするかね、と決めあぐねつつ車を出してもらう。味仙のつもりだったけれど、自動車の助手席も久しぶりでいっそう気持ち悪くなったので刺激物はパスすることにして、覚王山のコメダでお昼。ここまで来てコメダというのがいい。母は人生で三回目くらいとのことで、僕たちの方がコメダに親しんでいる。ビーフシチューを食べてケロッと元気になる。ふつうに空腹による不調だったらしい。

具合が悪すぎてお喋りどころではないから大人しく実家で寝てるか、と思っていたのだけど、お腹が満ちて元気も満々。本屋行きたい! と言っていた。

覚王山から南下する間、ずっとなにか喋っていた。口から生まれたような人だったのに今日はやけに静かだと思ったらお腹空いてただけとか、子供の頃から変わってないねえ、と呆れられる。

念願の七五書店。すごくすごくいい本屋だった。まったく偉ぶらず、格好つけず、ふつうの町の本屋の顔をして、すごいことをやっている。インターネットの文脈におもねりすぎない優れたバランスの選書でありながら、おしゃれになることも、先鋭化しすぎることもなく、ふつうにコミック雑誌やファッション誌など、日々の本が当たり前にちゃんとある。ただ当たり前に知的であること。夢のような本屋さんだった。興奮してみすずと岩波とNHKの教材とを買い込む。

帰り道、焼山でフルーツ大福を買って帰る。実家。甘いものをパクつきながら、アーレントや『ハイキュー!!』や『ファイアパンチ』のことをものすごい勢いでしゃべる。両親は、え、いつもこんな感じなの、と奥さんに問い、奥さんは、ふふふ、ええ、まあ、と頷いた。喋りすぎて疲れたころ、18時過ぎで、そろそろ潮時だった。

ON READING に向かって、念願の養蜂のやつ、あとはその場のフィーリングで日常生活のフィールドワークっぽいやつを二冊買う。ほくほくして隣のギャラリーに向かうと青木さんがいらっしゃって、体ごとでははじめまして! と挨拶をする。

トークはとても楽しく、好き勝手に喋った。あまり覚えていないが、たぶんいい話ができたと思う。アルフォートが好き、とか言ってたらなんだか壮大な話になったりした。資本主義という言葉を使わずに、もっと生活感覚から今の世の嫌さを切り崩せないか、みたいな話だったと思う。アルフォートはあんまり関係なく、ただ好き。

終演後、その場で本を買ってくださった方にサインをする。サインだなんて! こんな綺麗な本を汚していいのかしら、と思いながら、へどもどとサインする。ただ名前を書くだけだが、心を込める。安くも軽くもない本をこうしてわざわざ買ってくださる、すごいことだ。

完パケ後、青木さんと黒田さん夫妻と奥さんとでガスト。周辺のお店のほとんどは時短営業らしい。ディズニーランドの話や布袋のチューバッカの話などをした。学生時代のだべりを思い出して楽しかった。

イベント直前から降り出した雪はどんどんと勢いを増していて、いったんすこし落ち着いてきていた。母に車で迎えに来てもらい、乗り込んだ途端にどっと疲れた。そういえばいちばん大事なことを話しそびれてしまった。『プルーストを読む生活』のデザインを決めるため、初めて松井さんと、中村さんや平本さんを交えてお話をした時、僕は「ON READING やSUNNY BOY BOOKS に似合う本がいい」というお願いから始めたのだ。本の形を決めるときに念頭に置いていた好きなお店にまっさきに置いていただけて、さらには初めてのトークイベントまでやらせていただけたこと、ものすごく嬉しかった。それを冒頭に話そうと思っていたのに、開演時の拍手のあたたかさに、すっかり抜け落ちてしまっていたのだった。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員。プルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、「家」の別のやり方を模索するZINE『ZINE アカミミ』などを制作。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。