2023.02.20

LINE のアカウントからうっかりなのか不具合なのか、とにかく事実としてログアウトしてしまって、きのうからログインができないでいる。電話番号の認証が、SMS もこなければ、通話もこないので万事休すというわけだった。ログインできないなら新規で作り直すかと考えてみても、こちらも電話番号での認証がいるのだからどうしようもない。もう僕の生活からLINE はなくなっていくのかもしれない。家族以外とのやり取りなどほとんどないのだからそこまで問題はないのだけれど、帰宅連絡だけは日々あって、それができなくなるのは不便かもしれなかった。一個道具が使えなくなると、その道具への依存度が分かる。今回は、そこまでではないけれど、微妙にめんどい、くらいだ。そもそも格安SIM の仕様上、手の施しようがないのかもしれないし、VPN のアプリが悪さをしているかもしれない。あすアカウントロックが解けたらもう一度試してみようと思う。それでもだめだったら、仕方がない。一個ずつ手放していくというのも爽快だろうが、LINE に関してはそこまで生活を圧迫しているわけでもなかったので、ちょっとの不便が増えるだけだろうから甲斐がない。

きのうのデートで歩き回ってバテてしまって運動不足を痛感したので、夜は散歩に出ることにした。四〇分くらいで六千歩。

奥さんは花粉症が本格化してきて、具合が悪そう。夕食を食べながら「コアラ」とぼやき、「わたしはもう一般ラクダ」と言う。コアラ。一般ラクダ。僕の聞き間違いなのだろうが、奥さんは大したことではないと教えてくれない。それでいいと思う。なんでもかんでも即時的に説明を求めたり、納得したがるのは人間の愚かさである。僕はなんでもかんでもすぐに検索したり、尋ねたりする人のことを堪え性のないバカだとかるく軽蔑しているところがある。いや、控えめに言ってしまった。そういう態度が僕はかなり嫌いである。わからないものをわからないままにしておくほうがずっと知的である。なにか入力すればすぐに出力があると期待するような発想は貧しい。なにも面白くない。コアラはコアラであり、一般ラクダは一般ラクダである。それ以外のなにものでもないという世界を僕は生きる。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。