起きてからも昨晩寝る前に映像で見たガンダムのことを考えていた。とにかく舞台上のオブジェクトの配置がいちいち格好よくて、上演時間が演劇としての快楽に満ちてるのがいい。宇宙空間を人力で立ち上げちゃうんだよ。すごいよ。何がすごいって「ガンダムを見たなあ!」という気持ちでいっぱいなのに、肝心の機体の姿を知らないままだということだ。バカデカデスクチェアの勇姿は焼きついている。あれがガンダムだった。
一日中ふりどおしな日らしく、家で本でもつくるかと考えていた。ふいに一万部をめざすか、という気持ちがやってきた。一作で大当たりさせるというのではない。ZINE一作で大当たりさせなくても、たとえば一作平均300部くらい刷って30作つくれば累計で一万部が見えてくる。一年に2冊であと10年、4冊出せれば5年……続けていれば無茶な話ではない。これまではとにかく目の前の制作が楽しいからやってきたけれど、この楽しさをちゃんと長く継続していきたいな、と考え、飽きのこないための工夫が必要かもしれないと思ったのだろう。こういう変な目標を立てておいても楽しそうな気がしてきた。
雨で、本を読むのにも書くのにも身が入らない。とにかくなんの集中力もない。このままではなんも楽しくないからと有楽町まで『RRR』を見に行く。電器屋の上に映画館があるとは知らなかった。ふたつ下のフロアのスシローでお昼をさっと済ませるが、スシローは100円でなくなっていて、味もイマイチだったのでただでさえつまらない気持ちが加速して、これから三時間集中力もつ気がしない。というか、予告編が始まるずっと前から注意散漫で、なにひとつ能動的に見るということができそうになかった。それでも、映画は体感3秒だった。こちらになんの能動性も求めてこないというか、どんな重たい腰すら振らせる抗いがたいパワーを浴びて、気がついたら踊り出していた。歌と踊りとデカい話。インド映画と2.5次元舞台の親和性を思う。貧しい資本で、貧しい体でインド映画をやろうとする方法論こそが2.5次元舞台の現場には蓄積されている。いやあ、パワーの塊のような作品で、客電がついた瞬間、後方から、面白かったねえ! と華やいだ声がきこえてくる。エンドロールの曲中に掲げられる人たちの顔が一個もわからん、と好奇心をかきたてられるものや、イギリス人はどんな気持ちで観るんだろ、それな、「日の沈まない国イングランド」が血に染まるところがいちばんよかったわ、と語り合う高校生ふたり組。久しぶりに映画の上演後のこの浮き足だった感じに立ち会って、なんだかとても嬉しくなった。
steam のセールが今日までだったので、奥さんと相談してあれこれ買う。ふたりで遊べるのや、ひとりずつで遊ぶものをバランスよく。予算は五千円。『ホロウナイト』、『アンリアルライフ』、『違う冬のぼくら』。『39DAYS TO MARS』も買ってこれはさっそく遊んだ。『RRR』の『イップマン』なみの素直な憎しみの発露を浴びて、イギリスへのヘイトが溜まっている状態でいると、火星を目指すウィットに富んだ紳士たちの振る舞いがいちいち腹立つ。澄ました顔で紅茶飲んでないで踊れよ。宇宙船あちこちボロボロだぞ。顔の圧でなんとかしないと負けちゃうよ。