「きょうは僕の誕生日です。本やポッドキャストの感想、原稿依頼、連載や書き下ろし企画の打診、ラジオやイベントの出演依頼、お茶会や飲み会へのお誘い、ZINE の追加注文、そのほか喜ばしいものすべて、お待ちしております。」
戯れにこうツイートすると思いのほか多くの人にお祝いの言葉をかけていただいてびっくりする。そうか、祝ってもらえるのか。うれしいな。もうアカウントを消してしまったFacebook みたいな気持ちになる。あれは勝手に周知されるけれど、今回は自己申告なのだから納得ずくだ。これまではこの日記では自分の誕生日を一日や二日意図的に前後にズラしていた。もうそういうのはしないでいいやと思ったのは何故だろう。厳密に言えば肉体の発生と、自我の成立と、柿内正午というペルソナの創造はそれぞれに別日なのでそれぞれに誕生日を設定してもよさそうなものだが、そこまではしなかった。いちいち日付を覚えられないから。
なんであれ注目されるというのはイベントの告知や本を売るのにはいい機会だ。こういうダサいことを平気でやれるようになってしまった。年の功だろう。じっさい感想も、原稿の相談も、イベントの企画も、飲み会へのお誘いも、追加注文もいただけたのだから効果はあった。想像以上にあった。そうか、自分から動けば動くんだな、ということをいまだに新鮮に驚く。もう自意識以外とくになんの納得もしない妙な遠慮やスカしはしないことにした。そうやって寡黙にしていてもただの黙ったおじさんでしかなく、なにひとつ格好いいことはないという諦念からだ。どうせ格好よくないのなら、気さくに友達を増やしたい。孤高のつもりで孤立するようなことがいちばん怖い。
近所の焙煎所でコーヒー豆を買う。その場でも一杯もらって、淹れてもらうあいだにコンビニで印刷したクリックポストの伝票を箱に貼り付けていく。セロテープをビビビ、と引き出していると、用意周到なんですね、と笑われる。その場にいたお客さんも交えて作っている本のことを話す。文フリでなくとも、顔を合わせたからという理由で買ってもらえることはある。追加注文いただいた本たちをポストに投函する。
今日の晩御飯はスペシャルメニュー。好物のホタルイカの酢味噌和えを山盛り、かずのこ、たくさんの命。生誕を祝して無数の小さな命をいただく。古代帝国の皇族の気分。ほかにもかき揚げと冷たいそば、大根のフライ、わさび漬け、煮物、ご馳走だ。デザートには舟和の芋羊羹まである。よい一日だった。