2021.01.23(2-p.16)

きょうは労働日だったのだけど近場の宿の日帰りプランを予約して、そこで仕事をすることにした。風呂付き旅館。その響きだけでうきうきして、やったことは労働とその合間の『ネロポリス』、そして宿のWiFi を利用してのMacBook のアップデートと、最後のもの以外はだいたい家でやっていることと変わらないのだけど、すこしよそ行きの意識で持っていつもとちがう環境に置かれるとしゃっきりするようで、こんな冷たい雨の日でもはかどった。お昼休憩にいい感じのランチを奥さんと楽しめたのもよかった。仕事してるのにデートしてるみたいだった。

仕事終わりに貸切風呂をいただくことにしていて、しかしお風呂の予約の時間が18時で、よくよく考えればいまどこの店も20時に閉まるということは19時にはラストオーダーだ。お風呂出てチェックアウトしてとしていたらどこももう閉まっているのではないか、前もって予約しておいてテイクアウト、なども考えたがそもそも今夜なにが食べたいかがまだわからない、だからこそひと風呂浴びてから考え出したかった、そもそも人がというと大袈裟だが僕たちが夕食を検討し出す適正時刻が19時だ。そのころにすでにオーダーを締め切るような状況の不便さに改めて気がつく。呆然として、なんでだよ、と思う。夜の食事といえば会食としか思い描けないような貧相な想像力しかはたらいていなかったんじゃないか、奥さんとさんざん駄々をこねたが、こねても店は開いていない。悄然として、しかし頭は回らず、とりあえずお風呂に。家でいくらお風呂に入っても芯まで暖まる気がしないのに、15分も入れば充分カッカしてきて、これならラストオーダーに駆け込める! 宿の外に出ても、宿の近くのおいしいピザを食べて家に帰り着くまでも、ずっと指先までぽかぽかしていた。家のお風呂と何が違うんだろう。なんだかすごい贅沢なことをした気分になった。

奥さんは家に帰るなり倒れ込み、全身だるい、なんか、すごい、やっぱわたし、すっごく具合悪いみたい、と言った。

今夜は雪かもしれないとのこと。自律神経が乱れに乱れている。手は尽くしたが、僕もだんだん指先が冷たくなってきて、後頭部のあたりでリズミカルな鈍痛がきている。低気圧が来ている、えぐいやつ。そう思って「頭痛ーる」を開くとあんまり大した下がり幅ではない。さいきん体感と「頭痛ーる」との乖離が激しくて、あんまり「頭痛ーる」を信じられなくなった。結局はじぶんたちの自律神経が乱れるかどうかだけが重要なのであって、気圧が下がっているかどうかはじぶんの自律神経の調子で判断する、こういう心性はきっと陰謀論と相性がいい。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。