2021.01.31(2-p.16)

先日スーパーで十三香というすべてを中華にする調味料を見つけたので買って、お昼に唐揚げを買いに出てそれをかけて食べた。おいしい。香りはしっかりしていながら塩味などがあるわけではないので、使い勝手がよさそう。チャイやホットワインにも合うだろう。僕も奥さんも体調が悪く、じっとしながらゼルダなどを遊んでいたが僕はなんだかどんどんだめになってしまって、本が読みたい! となかば駄々をこねるように『グールド魚類画帖』を読んでいた。ハイラルでトカゲを集めたり裸ん坊で試練に挑んだりするのを奥さんに任せきりで、ずっと読んでいた。お昼にビールも飲んだので途中寝てしまいさえした。そうして読み終えてしまった。尾鰭まで最高の小説だった。これは借り物だが、手元に置いておきたい本だ。なんなら原書も欲しい。黙って急に本を読み出したので、奥さんはびっくりしてしまった。僕は深く反省し、償いたい、と言った。すると奥さんは面白い日記を書いたら許してやろうと応えた。こんな一日中ソファに寝そべってしかいないような虚無な一日を、どう面白く書けるというのか。僕は途方に暮れた。

そういえば昨日だか一昨日にイキリインターネット廃人たちがホモソーシャルなノリでいちゃいちゃするSNS に招待してもらった──めちゃめちゃ頼み込んだ──のだけど、アカウントだけ作ってまだ一度も使えていない。ポッドキャストを始めた時もそうだったし、ひととオンラインで会う時はいつもそうなのだけど、ずっと家に人といて、その人たちとは別の人に向かって実際に声を出すというのは、けっこう胆力や根回しが要る。そもそもすでに家という排他的なプラットフォームの内側で、奥さんというとびきり気の合う素敵な人といつでもおしゃべりができるのだ。しかもそれをこうして日記という形で不特定多数に見せびらかすこともできる。アメリカでこのサービスが生まれるずっと前から、僕の家はクラブハウスだったとも言える。いい音楽をかけることもあるし、踊るし。しかしあんまりお互いに興味もない他人と毒にも薬にもならない駄弁りを行いたいという欲望は僕にはあるらしく、そういうものとしてゆくゆく使えたらと思うが、どうやらテーマとホストと時間まで決めて開催されるものっぽくて、俄然めんどうくささや合わなさを感じる。なんかいまは実業家っぽい人たちがきゃっきゃしてるだけみたいだし、話題もなんだかマネタイズだの集客だの、悲しいくらいに凡庸な広告の論理で立てられたものしか回って来ず、まったく興味が湧かない。談話室というか喫煙所みたいな、空白の時間を期待してたのだけど、そもそも期待が間違っていたのかもしれない。一年以上前にリリースされたサービスが、いまさら、本国ではレイシズムの温床としてすでにかなり問題視されてるタイミングでにわかにこの国で話題になっているのとか、誰がどう火をつけてくんだろうなこういうの、という興味はすこしあるが、そういう扇動の端緒に無頓着なままどんどん踊り出せる人たちのネアカ性に、久しぶりに清々しいまでの合わなさを感じる。こういう悪口が言いたいがために招待してもらったのだけど、まだ使えてもいないから、もっと無駄で無益で益体のないものとしての使用法を探ってみたい。どうでもいい人たちとその場限りの駄弁りをしたいな、という気分だけが募る。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員。プルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、「家」の別のやり方を模索するZINE『ZINE アカミミ』などを制作。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。