2024.03.29

朝からひどい天気。仕事部屋の窓にはヒビが入っているので強風はびゅうびゅうと音を立てる。さすがに吹き込んできてあれこれ舞い飛ぶなんてことまではないのだけれど、音だけでもかなり鬱陶しい。雨もすごいらしくガラスが曇っていて外はほとんど見えない。ぐんにょりして過ごす。予報では午後からは晴れるらしいが、こんなに酷い天気だとそんな明るい未来を到底信じることはできない。気がついたら年度が改まる時期で、ということは自分で設定した締切がもうすぐそこなのだが、この数日あっと思い出しては忘れてしまうというのを繰り返している。きょうも今こうして書いて思い出した。このままではいけないので明日のタスクに明記しておく。二本のうち一本はあとは修正だけで済むが、もう一本は未着手だ。

『新たな距離』を読み始める。おそらく僕にとって最も面白いのは次作であろうと前書きからも察せられるが、ひとまず頭から読み出す。はじめのほうは再読にあたるので、わりあいすいすい読んでいく。大きさも製本も雑誌のような佇まいで、がしがしと使うようにして読んでいく。すぐにぼろぼろになってしまいそうだった。というか、そのように酷使して汚したり壊したりせよとアフォードするような形をしている。

お昼は奥さんが蕗のとう味噌と挽き肉でパスタを作ってくれる。醤油と出汁で茹でた麺がよく馴染んでいてとびきりおいしい。食後はたしかに雨も止んでいた。昨日の時点で冷蔵庫は空っぽで、一緒に買い物に行こうと話していたので腹ごなしに出るのかなと待っていたのだが、奥さんはごろごろして動き出しそうにない。なので本を読んで待っていた。するといつの間にか仕事部屋に引き篭もってしまった。行かないのかと訊くと、うーんあとにする、と言う。夕方まで真面目に働いて仕事を終わらして、なんだかんだですっかり夜で、待ちくたびれてしまった。今日の楽しみといえば奥さんと散歩をすることくらいで、それは日向ぼっこも兼ねるつもりだった、それなのにもう日も暮れたし腹ぺこだ。でも買い物をしないと何もない。なけなしの果物で焼き林檎を作って気力を蓄える。最寄りのスーパーが閉まったので駅前まで歩く必要がある。八百屋で野菜と豆腐を買って、スーパーで厚揚げと牛乳とお菓子を買う。冷凍餃子の無人販売にも寄って、大荷物だ。スーパーが遠いと頻度が減るから一回の量が増えるし、重たい荷物を持って歩く距離も長くなる。いやすぎる。よたよたと帰る。よかれと思って軽い袋を譲った奥さんは振り返りもせずにすたこら先に行ってしまう。ひどいやつだ。鍵を持っていなかったらしく、200メートルくらい離してからようやく振り返って待っていてくれた。

手分けして夕食を準備する。餃子、ピータン厚揚げ、ポテサラ、キャベツとトマトのスープ。たらふくこさえた。しっかり満腹。前半だけ観ていたカイジの舞台版の残りを見届ける。面白かった。カイジ役の俳優はずっと出ずっぱりで喋り通し、つねに表情筋を酷使していて、そのくせ不器用そうでよかった。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。