2021.02.19(2-p.16)

引き続きモッセ。面白い。大衆政治というものを駆動するのは操作ではなく美学なのだという話。ひとの美意識が世の中を動かしていくというアイデアに僕は説得力を感じるというか、自分が美しいと思うものに抗うことがいかに難しいかを僕はつよく自覚しているということだった。古典古代の真善美という発想、すなわち調和が美しさと同義であるという発想は、美の名の下に全体主義的なものを呼び寄せやすいし、実際ドイツは帝国時代から意識的にギリシアの様式を国家的祭典に取り入れていた、という論を読みながら、ギリシア・ローマ文化を理想化することが近代ドイツのひとつのスタンダードであったことを踏まえると、ギリシアをその基礎に据えたアーレントの思想というのへの印象も変わってくるようで面白かった。

作業中は梶芽衣子の「女囚さそり」シリーズを流していた。初見だが面白かった。三作目まで。一作目が一番すきだけれど、二作目の白石加代子の顔がよかった。というかこのころの邦画はいい顔が多い。顔だけで画を保たせてしまうというか、梶芽衣子もそうだが台詞が必要ないくらい顔がうるさい。ほんとうは『修羅雪姫』が観たかったのだけど、hulu にはないようだった。とはいえエログロの気分だったので満足。一作目の公開が72年だから寅さんでいうと「柴又慕情」と「寅次郎夢枕」のころだ。60年代とともに学生運動が下火になったこのころも、いまだ家父長制や国家権力への不信感という言葉では生ぬるい、憎悪といってもいい情念がこれだけ強かったのだろうか、そう思えるほど『女囚701号/さそり』では男たちの醜悪さと重ねるように国家や国旗がこれでもかと映される。しかし三作とも結局は女同士の戦いみたいなものに矮小化してしまうのか、とがっかりしかけたところで、ちゃんと男どもへの復讐で締めるのだからとてもいい。

『CCC』はなんというか、これが「美少女ゲーム」というやつなのだろうか、だいぶノリがキツくて、せめてさそりを見習え、と思ってしまう。これは消化試合になりそうだな、と思いつつも、セイバールートはしっかりと押さえていきたい。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員。プルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、「家」の別のやり方を模索するZINE『ZINE アカミミ』などを制作。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。