2024.07.25

朝はゴミ出し。新居では夜に出せなくなった。捨て場の自治についてもいずれ説明があるのかしらと思いつつ、今のところよくわからないままでいる。東京よりもすこしだけ面倒臭いルールも相まって、うっすらと緊張し続けているのだが、溜まってきたので出した。引っ越してきてからちょうど二週間。前の家でもそのくらいは溜めてから出すこともあったし、自炊を再開できるようになるまで外食が続いたりもしていたから周期としては妥当ではある。それでもなにかしら、とうとうデビューした、という感じがある。そもそも二人して朝早くから活動しているというのが新鮮だ。僕が袋を出しに行くあいだ、奥さんは庭の草を袋詰めしてくれた。草自体は刈ってもらっていた。

休日に早起きができたのは僥倖とばかり、さっそく読書。いちにちかけて『パンクの系譜学』、『ガングロ族の最期』、『ジャパン・ホラーの現在地』を行ったり来たりしながら読む。産業革命期から語り起こすパンクスたちの系譜、都市とその周辺の消費文化として描かれる小麦肌の来し方、メディアの変遷とともに共同性の後ろ暗さをカリカチュアするホラーの現在地。三者のスタンスは互いに反目しあい、アプローチもばらばらでありながら、どこかで現場の生の声を聞き取ろうという態度が共鳴しあい、もうすこしで無理やり一本の文脈のうえでまぜこぜにできそうな予感がある。つまり、いい感じの読書だった。途中からはBGMがわりにスクリーンに映画を投影しておいた。『可愛い悪女』は遠く隔たった渋谷にまで続くビーチを映写するブリジット・バルドーのBronzed な肌だけが見どころで、話としては引くほどマッチョ。それから『白い暴動』、『D.O.A』を立て続けに。ねえいいかげん起きなよ、ナンシー・スパンゲンに介助されないとタバコも吸えないほどぼろぼろのシド・ヴィシャスの姿にしょんぼりしているからこそ、手元の文字で紹介されるイアン・マッケイのまともさが輝く。

さすがに読み疲れて、夜はよぼよぼ。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。