目が覚めたのは五時台で、きのうの酒は残っていなそうだったけれどさすがに寝不足で、うとうとしながら眠りに戻り、起きたのは九時過ぎだった。すでに家を出るべき時間だが、昨晩は面倒で記念冊子の印刷も、荷造りもまだだ。遅刻だな、そう決まると落ち着いてしまうもので、プリンタを稼働させ、ていねいに荷造り。そこまで売れないだろうという目算で少なめに積み込んだはずなのだけれど、うまくスーツケースに入りきらず、あとから起き出してきた奥さんに助けを求める。汗だくで向かう。大塚から都電がよさそうだった。大塚駅のまわりはずいぶん奇麗になった。アトレのほか何もなかったのに。
坂をくだりのぼりすると会場のひがいけポンドがあって、岸波さんにご挨拶。慌てて設営をして、黙々と紙を折って切って冊子を量産する。ある程度の量ができるとキビズのレモネードとチーズケーキで一服。あっという間に午後。Ryota さんが来てくれて、柳沼さんとのトークのあいだ店番をしてくれる。柳沼さんとは「いま文芸を評する」という題で、配信の冒頭でおいしいモヒートを飲みはじめ、溜まりに溜まった時評に対するモヤモヤを吐き出すような時間になった。楽しかった。Ryota さんはなんだかんだでトークの後も店番をしてくれて、僕がいるのに僕の本を僕よりも手際よく紹介し、ついでのように著者さんがこちら、と僕のことまで紹介してくれるので可笑しかった。この日の売り上げの半分くらいはかれの仕事ぶりのおかげだろう。双子のライオン堂の竹田さんとも話したが、こういう場所では声をかければけっこう売れる。僕はハートランドに持ち替えて、ほろ酔い気分でへらへらしているばかりで、あまり売るぞーという気分にならない。気の合う人たちとにこにこ遊ぶ一日、というつもりのようだった。会えて嬉しい人たちとたくさん会えて、ふわふわした心持で、だからろくに喋れていないのだろうが、なんだかすごく楽しいな、と思っていて、たぶんなかなかに酩酊しており、だからあまり覚えていない。ただ楽しかったという雰囲気だけがある。それでも売れ行きは思ったよりは順調で、場所代くらいにはなったはずなのだが、だいたい酒代に消えていった気もする。奥さんもトークの途中から来てくれていて、一緒にチーズクッキーやキッシュを食べた。日没後、友田とんさんがレモンケーキとホットコーヒーで〆ていて、あれいいな、と僕も友田さんセットください、とさわや歌さんにお願いする。本のイベントで本よりも酒を買うというのは新鮮で、その新鮮さを面白がってどんどん酔っぱらった。撤収や片付けもろくに手伝えず、ベンチでくっちゃべっていた。柳沼さんは僕の倍は呑んでいたはずなのだがいつまでも顔色変わらず爽やかでてきぱきと洗い物を済ませ、手際よく原状復帰を行っていた。岸波さん、さわや歌さん、竹田さん、柳沼さん、友田さんと一緒にラーメンを食べて、僕はもうなにも判断できないと匙を投げておいたので終電を調べてくれていた奥さんのおかげで一足先に辞去するタイミングもぴったりで、しっかり終バスで帰宅した。
お風呂のあとに録音を行い、日付を越していたのですぐ配信。お茶を淹れて奥さんがヒロアカの新刊を読む姿にはっとして、ジャンプをひらいて最終回を見届けた。それから『正反対な君と僕』を読んで、泣く。