自宅の階段をおりるたびに家のなかに階段がある!と喜びがわき上がる。あがるときは楽しい。一生で、いちどでも一軒家に住むことになるとは思ってもみなかった。実家もマンションだったし、はじめてのことだ。いや、思ったことがないというのは嘘かもしれない。子供のころは、祖父母の家がどちらも一軒家だったから、父母くらいの大人になるとマンションで、年寄りになると一軒家なのだというような、素朴な進化史観をもっていた。小学生に上がる前か、上がって間もないころ、曾祖父の家に遊びに行ったらそこがうちよりも狭い集合住宅だった。その衝撃はものすごかった。年をとればとるほど家は大きくなるというぼんやりと確信していた世界観はそこで打ち砕かれ、以来、成長というものを疑わしく感じている。
気温としてはあまり変わらない気もするが、陽射しの凶悪さはいくぶん和らいだ気がする。べたべたした湿気もましになっていて、汗はかくが過ごしやすい。まだ日傘は手放せないが、日没後の帰宅時のほうが汗びっしょりになるのはなぜなのだろうか。帰路のほうが早足なのかもしれない。それはそうだろう。