2024.09.02

月曜なのでやる気が出ず、朝は早めに起きたのだけれど朝ごはんを食べたあとしっかり二度寝をしてしまう。それでも労働には差し支えない程度に早起きだった。あきらかに寝不足というか、昨日の興奮の余韻もひいて、ただつらい疲れだけが残っているようすで、日中はしょぼくれてやり過ごす。せっかく在宅なのに、休憩中に本も読める気がしないで、PSPで「ディスガイア2」ばかりやっていた。無心でレベル上げをして、シナリオを圧倒的な戦力差でねじふせるつもりだった。

夕食のあと、奥さんとスーパー銭湯に出かけた。一時間後に集合ね、と約束してお風呂に入る。ジェットバスで腰や足裏の痛みをほぐし、露天風呂でゆるめていく。サウナもある。久しぶりに入ろうかな、と入ってみるとものすごく暑くてすぐに汗だくになる。水風呂もしっかり冷たくてうれしい。屋外のベンチに腰掛けていると、強い風が体を撫でていく。表皮がぴりぴりとしてきて、その微細な震えが肌から滲み出てそのまま風に流されていくような感覚と同時に、その震えは徐々に内側へも、お腹の底の方へと伝わっていって、ぞくぞくする。表皮の外への発散と、内側のぞくぞくとがおなじひとつの震えとして感覚される。溶けていくようで、入りこまれているようでもある。交互浴がうまくいく時、いつも、やらしい、と思う。あがって、ちょうどの時間にロビーに出ると奥さんはまだいない。十五分ほど遅れて出てきて、前に目眩を起こしたことがあるから心配していたら、ととのうってやつを初めて体験できたかもしれない、とこっそり耳打ちで教えてくれる。ととのうって、適切な語じゃなくない? あれは、すごくやらしいなにかだった。そう奥さんが言うので、やっぱりそうだよね、と頷く。ととのうは隠語。ちょっと酩酊っぽい感じもあって、なんかおかしくなってる実感があった、ぜったい体に悪いのに、癖になちゃうのもわかる。また行きたいね、でも、あんまりハマっちゃうのも危ないね、夜道を家まで辿りながら、夜風にあたるたび、まだ気持ちよさの名残がある。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。