2024.09.30

朝はゴミ出し。ゴミ箱を庭に出しておく運用にしたらぎりぎりまで溜め込んでも気にならなくなっているのだが、さすがに夏場に半月以上ねばると虫がわいてきてしまったことだった。蛆がわいてきたんだよ! 数日前、奥さんは戦場帰りの目で教えてくれた。僕が会議をしている間にそれを発見し、酢で生成した殺虫スプレーを吹きかけ、割りばしで一匹ずつ潰していったのだという。これから涼しくなるから多少はましかもしれないけれど、対策はきちんとしつつ、もうすこしこまめにゴミ出しをするべきかもしれなかった。朝の電車で『庭のかたちが生まれるとき』をほとんど読み終える。久しぶりにちびちび大事に味わう読書だった。

白いTシャツでご飯食べると必ずはねかす呪いにかかってるのかもしれない。ついこの前ハンバーグの汁ついて一生懸命洗い落としたのと同じやつに、今度はハヤシライスいった。祓除が必要。『庭のかたちが生まれるとき』のあとがきを読みながら散漫に食べていたのがよくなかった。食事はちゃんと注意して行うべきもの。さいきん出勤が億劫な理由として、これまでは今日はあれが食べたい、というような食欲で動機づけしていたのが、おそらく寒暖差由来の食欲減退によってあまりうまく機能していないというのがある。食事が楽しみじゃないと外に出る理由がほとんどなく、しかも雑に済ませがち。そのせいでこうしてTシャツも台無しにする。

行きの電車で漫然と長袖を見繕っていたし、どちらにせよてきとうなのを買おうと考えてはいたのだ。ふだんは休憩時間めいっぱい使うランチを早めに切り上げてユニクロに寄る。秋物のシャツをいくらか試着して、一着セルフレジに持って行って会計をして、そのまま作業台でタグを外して羽織って出る。羽織るだけだと赤茶のシミが見えてしまうことが分かったのでボタンを留める。シャツは枯葉みたいないい色だと思ってそれにしたが、きょうのズボンも同じような色なのでちぐはぐではあった。ちぐはぐというか、蓑虫みたいではあった。しかし実は僕は蓑虫みたいなのはけっこう好きだった。だから、まあちょっと変かもだけどいっか、と思いながらしれっと職場に戻る。昼休憩後にお召し替えをしてくることへのツッコミはなかった。涼しくなってきていてよかったと思う。

『非美学』の著者による解説動画、五時間あるので昨日から小刻みに聞いている。聞き手の二人の仕事が非常に巧みですごい。三章で中断しているから、これを梃子にしてまた読みたい。『眼がスクリーンになるとき』を読んでいた時、サウナでぼーっとしていて、だんだん肌の感覚の外縁が風に吹かれて溶け出していくような感覚があって、眼がスクリーンになるとは要するにこういうことだろうと思った、その記憶を想起しつつ、あのときはなにか納得した気になっていたけれどあんまり読めていなかったんじゃないかなという気分にもなる。身体が後発だからと言って、先行する知覚へと巻き戻っていけばいいというわけでもなし。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。