2024.10.01

かたちずいぶん久しぶりに九時間ちかく寝た。頭がすっきりした実感はないけれど、寝たなぁという満足はある。労働の合間に今週末のまわりみち文庫でのレクチャーのためのレジュメを仕上げる。今日明日で時間を捻出してなんとか間に合わせようと考えていたのだけれど、あっさりと一時間でできあがる。労働も久しぶりに効率よくこなせて、なんだろうな、と思う。夕飯の買い出しに出て、ああ、もしかしてずいぶん長いあいだ睡眠が足りていなかったのではないかと気がつく。なにかうまくいかない感じがある時、なんとなく焦りが募りなにも手につかない時、なぜだか何をしても楽しくない時、そういう時は、だいたい、すべてを諦めて寝たほうがいい。本も読めそうだった。『庭のかたちが生まれるとき』がよかったので、その流れで大事に取っておいていた『かたちは思考する』を読む機が熟した気がして序論を試し、やはり機運は高まっていそうだったのでリュックに入れた。明日からはこれ。

夕食は焼肉で、梨をつかったタレを試してみる。肉の風味を邪魔しないようにうまみを控えめにしているレシピにしてみたとのことで、たしかにごはんを無駄にすすませない。手羽トロとレバー、タン塩という並びで、このタレならちゃんと焼肉らしい豚や牛があってもよかった。お風呂の後はSwitchで「かまいたちの夜」のリメイクで遊ぶ。ふたりとも友人の家やインターネット上の試遊でなんとなく触れたことがある程度の記憶で、面白かった気がしていた。なんかちょっとした選択で血管が切れて死んじゃったりするのだっけ。そう言いながら始めてみると案外死なない。洗濯が終わるタイミングで切り上げたから、小一時間で、まだ話が始まったところ。それとも、一晩、あるいは十二時で解決しないといけない感じなのだろうか。ボリュームを測れないままでいる。

昼と夜に換気のために窓を開けると、明るいうちは鵯が、日没後は鈴虫が鳴いている。まっさきに音響素材のようだ、という感想を抱く。つくりものの記憶が、元ネタの真正性を薄っぺらいものとしてしか感じられなくしている。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。