寒い。長袖の部屋着の上にワークマンのダウンベストを羽織り、その上からユニクロのダウンジャケットを着込んだ。指なしの手袋をはめて、足元もマグロ漁船の靴下の上からワークマンのルームブーツ。すっかり真冬の装い。足元にはヒーターもつけておく。人生で初めての、木造家屋の越冬がはじまる。
蛙坂須美と山本浩貴という、信頼を寄せている両名が帯文を寄せているということで買った横田創『埋葬』の表題作を読む。今年一年の小説を眺めてきた僕にとって、小説とはまじめに聞いてもらいにくい話、弱い話術だと思えてきている。簡単に素通りできてしまうものとしての小説。ふつうに考えて、情動の動員のために短く定型化された文章の濁流に簡単にさらされることのできるこの体が、だらだら長い散文を、わざわざ腰を据えて真面目に読んでやる義理も動機もほとんどない。だからこそ、うっかりがっと掴まれてしまった時、この体の深いところから掘り起こされるような官能を待ち望んでもいる。『埋葬』は、どうすればただの文字列を、相手の胸ぐらを掴んで揺さぶるようなものとして機能しうるかを真剣に考えている作品だった。併録されている二作も楽しみだった。
昼はうどん、夜は鶏鍋。とにかく温かくしなければ。MAOちゃんの地元凱旋試合を録画で見る。これまで鈴木みのるは往年のレスラーという程度の印象を出なかったのだけど、これを見るとやはりすごいなあと感じる。説得力が段違いだ。
『それでもなぜ、トランプは支持されるのか』は三分の二くらいを占める政治思想史の概観パートを終える。ここからは文化戦争のパートが挟まり、再び思想潮流の読みへと戻っていくようだった。短めの章ごとに同じ固有名詞が変奏されるので、だんだんと読む速度が上がっていきつつも描かれる像はクリアになっていくという作りの本で、ずいぶんと頼もしい。切り口や側面が多彩であっても、アーギュメントは単一なので、どんどんわかった気になれる。