2025.01.10

午前、教えてもらったマイクが届く。これで僕も音に配慮するポッドキャスターになるぞ、と張り切ってセットアップ。新年だからだろう。セットアップがしたくてしかたがないらしい。何かを始める準備をすること。あたらしいもののやりかたを組み立てること。そうやって、新規ななにかを立ち上げたくて仕方がないらしい。マイクで何をしたいのかって、そりゃポッドキャスト配信の環境構築、編集アプリの初期設定だよ。MacBook側にC端子しかなく、USB接続ができないことが判明。会社の充電ケーブルで試行し、なんとかなりそうだったので、両側ともCのケーブルを手配。本格的なマイクテストは明日に持ち越し。

novel-writer の設定は落ち着いてきた。ここで書くというよりは、ある程度書いたものをここで調整するというのがよさそう。Dynalist はここ数日頻繁にサーバー不具合で落ちていて、まじで代替を探すべき、しかし同機能で有償とはこれいかに、というところで足踏みを続けている。読書メモとしてはNotionを上手く使いこなせていないので、Obsidian を触ってみる。どうじゃろな。数年前までは必要を感じていなかったというか、ピンときていなかったけれど、加齢によって能力が低下してきたことにより——あるいは、ようやく自分の能力のしょぼさに自覚できる程度に賢くなったことにより——メモやノートの重要性がかなりずっしりと身に沁みる。

昼に買い物、猫のごはんを切らして大慌てで買ったのと、人間のための食材もあれこれ。レジに並ぶあいだ、新しく作る本についてやりとりしているメールの新しいものが受信されて、一読し、じんわり嬉しい気持ちが募る。楽しみだ。僕はメールは開いた時に返信する。そうしないと忘れてしまうから。だから返信が極端に早い時もあれば、遅い時もある。読んだ時が返す時だ。しかし、相手が丁寧に、慎重に考え、言葉を書いてくれていると感じる時、この速さはプレッシャーではないかとすこし不安になる。メールの返事はすぐ書くくせに、肝心の本の中身はまだ未着手。なぜなら、執筆ツールの選定に忙しから。

ルドンはたまに咳き込むことがあり、咳は犬の吠え声に似ている。人間たちは猫が背を丸めて、虚空を見つめながら、うお、うお、と咳をするたびにおろおろと駆け寄って、ちいさな背中に手のひらをあてて、大丈夫、大丈夫、とそれはほとんど自分たちに言い聞かせるようにして声を出す。体重が平均よりも少し下回っているから、寒さに耐えられないのかもしれない。そう思って餌をすこし増やしたら、どんどん肥えていった。さすがに、これはでぶだね、というフォルムにこの二日くらいなっていて、餌の量は元に戻したがまだ太り続けている。高いところに飛び乗るのとか、猫じゃらしを捕まえにジャンプするのとかをすこし面倒がっているような印象もある。高いところからぴょんと飛び降りる際、どこか躊躇っている感じがあって、これはまずい、と思う。たくさん遊んで運動してもらう。夜にはすでにしゅっとしてきている。猫の体重は五〇グラムほど平気ですぐに増減する。そしてその五〇グラムがとても大きい。

僕の指を奥歯で甘噛みするようになってきている。けっこうすごい形相で、奥さんから見ると激怒した猫に僕が襲われているようにしか見えないらしい。当の本人は、甘やかな力加減に、どちらかというと好意のようなものを幻視している。僕の指が奥歯まで飲み込まれるのを利用して、口を開けたままにしてもらって歯磨きを試みるのだが、これはあまりうまくいかない。しかし、これまでよりはましかもしれない。しばらく格闘する。奥さんは爪を切ろうとするのだが、これも嫌がられる。家に来てすぐの頃は大人しく切らせてくれていたのに。慣れてきてわがままになってきているのか、この家のホモサピが舐められているのか。ふたりとも手はけっこう舐められる。そのくせ逃げていかないで、暴れるくせに人の膝の上や側から離れようとはしないのも可笑しい。

夜、家の件で打ち合わせ。唐揚げと具沢山味噌汁の夕食。睡眠の質改善運動の一環として、引っ越して以来なんとなく据わりが悪く、寝返りのたびぎしぎしいうベッドの脚をもいで、すのこ状にする。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。