2021.05.16(2-p.53)

きょうは文フリ。来場者として参加するのはいつぶりだろうか。朝は早めに起きて、コーヒーを飲んで支度をすると思いの外はやめに済んでしまって、まあ12時前についていた方がよかろうと家を出る。モノレールで『ボーイズ』読み終え。流通センターには20分前には着いていたのに、いったんトイレを済ませておこうと思ったらすぐさま列が倍くらいに延びていて、おおーと思う。それでもそれがピークで、極端に延びるほどではなかった。時間になるとスムースに入場は行われた。

同居人に頼まれていたおつかいをさくさくと済ませ、『フェミニズム文学ガイド』は自分のぶんも買った。てきとうに歩いていると友田さんがいらっしゃって、アルバイトの方含めこんにちはと言う。月報をいただく。わかしょ文庫さんにも挨拶をして『ランバダvol.3』を買う。竹田さんが『プルーストを読む生活』をなにかの媒体で紹介してくださったと知る、竹田さんは後で見るとFLP のジャケットを羽織っていて最高にイカしていた。あんまり買わないでいいやと思っていたのに会場を歩いているといろいろ買っているもので、気がつけば読書トートはずっしりと重たい。あれ?

岸波さんと二見さんにご挨拶して、お店番。岸波さんの金庫とKIBI’S BAKE SHOPの金庫と、自分の本も置かせてもらうので自分の金庫も管理して、それぞれの在庫を捌いていくのは頭の体操のようで──僕はこの「頭の体操」という表現がけっこう嫌いだ──楽しかった。『プルーストを読む生活』も、今回作った冊子もちゃんと売れていって、嬉しい。お会いしたかった人にも何人かご挨拶できて、僕は文フリは公園というか校庭のようなところだと思っているらしい。そこに行けば遊んでくれる誰かがいる。海乃凧さんとバトンタッチして、時間になったのでさっさと会場を後にする。奈良原さんにもお会いしたかったな。

近所の蕎麦屋でさくっと済ませ、家に帰るとすぐに今夜配信分の録音。その後寝落ち。もろもろの連絡などをして、『月報3』を読む。月報の皮を被った文芸誌のようになっている。おそろしく面白い。なんだこれ。各人の原稿はそこまで文字数多くないはずなのに、異様に濃ゆく、体感としてどのエッセイも読書時間がとても長く感じるし、しかもそうした体感時間が一つとして同質な流れかたをしていない。麺つゆとカルピスとりんご酢と次亜塩素酸ナトリウムの原液飲み比べのような冊子。僕はジ・アルフィーで言うと高見沢なので、自分の文章も注意深く読むのだけど、これまたいい文章で、この冊子の良さにちゃんと寄与してる。なんだかよくわからないエッセイで、とてもよかった。『読書のおとも』も、ははあ、こうくるのかあという文章が揃っていて、なにより配列がいい。そして僕の文章は、この詩集のような組版を想定していない文章だった。下部が空白をたっぷりとったこの組版だと、一文一文をちゃんと丁寧に読もうという運動を促す。僕の原稿は接続の成り立っていなさを速さで補うような書き方をしていたので、この組み方が要請する遅さで読むと変さが際立って、それはそれで自分の予想もしない読み口で面白かった。こちらは書いてからだいぶ時間が経っているので自分でもなにを書いたか覚えておらず、素直にこの人はちょっとおかしいんじゃないかな、という気持ちで読めた。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。