2022.02.05

今日はデート。歩きながら奥さんと日記の話をしていて、毎日の日記にはムラがあり、その質は書き手としての自分と、書かれる対象としての自分との距離で決まる。面白い日は自分をうまく突き放せているが、自分とべったりしているときの日記は面白くない。だから今日は気分がいいな、という日の日記が面白いとは限らず、むしろそういう日は危ない。気圧最低だし、ひどいミスを連発するし、もう今日はどうにもならないな、という日の方が、むしろその日の自分を対象化しやすいから面白くなる可能性は高い。だから僕は僕の体調が悪い日の方が日記はいいものになりがちだし、ノリノリで書いていても主観が暴走しているだけの時は最低の出来だ。

今日は東京駅へ。無性に味噌カスが食べたくなったので矢場とんへ。間違えた。味噌カツです。すごい打ち間違いだ。東京駅は難しくて八重洲と丸の内をだいぶうろうろした。もうダメかと思ったが、なんとかたどり着いた。店内のテレビでは豚が豚を揚げているグロテスクなアニメが再生されていた。味噌カツは美味しかった。自分の脂身許容量をちゃんと把握できて、気持ち悪くなる前にもうよしておこうという判断ができて大人だった。

それから大丸でディメーターのポップアップでいろんな香りを嗅いだり、バレンタインの催事をひやかしたりして、それから有楽町方面へと歩いて行って、そのまま銀座まで。三越でチョコレートを買った。値段で躊躇って買うかどうか悩んでいたくせに、ひとつ買うと勢いがついてどんどん買って可笑しかった。

帰って奥さんと録音。久しぶりに僕が意固地になって険悪になる場面があり緊張感があったが、最終的にはまさかまさかの大団円。僕としては長年の呪いを解かれた格好。『セーラーゾンビ』回のRyota さんの「これは、いま、俺しかわかってないな!」という叫びに近い極私的なクライマックスがあって、僕は感激していた。これは早くみんなに聴いてもらいたい! と思いつつも、いや、これは他の人が聞いても、なんじゃこりゃ、かもなあと冷静に判断しているところもある。でもどうだろう、奥さんゲスト回史上最高傑作だと思うし、なんならこれが最終回でもいいくらいの出来だとやっぱり思ってしまっているな。もちろんこれからも続けるし、きっとまた八十五回に一回くらいこういう出来事は起こるだろうという楽観もあるのだけれど。

なんだか感傷的なので、毛皮のマリーズ『マイ・ネーム・イズ・ロマンス』を聴きながら日記。横で奥さんが踊りだしたので、中断して僕も踊った。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。