2022.07.19

楽しみにしていたダンベルが届く。さっそくYouTubeで三個か四個動画をザッピングして使い方を学習し、色々やってみる。きんにくんの動画がいちばん見やすい。仕事の資料を読みながら、合間に『ザ・ボーイズ』を観ながら、会議中、ずっとダンベルで遊んでいて、肩と背中を多めに行った。

ネロの評伝を読んでいたら小アグリッピナの権謀術数をHBOドラマで観たいな、という気持ちがむくむくやってきて、『ザ・ボーイズ』がもったいなくなってきたので長さに怯んでいた『ゲーム・オブ・スローンズ』を観始める。今まさに観たい感じのやつだ。観始めてわかったが、かつて一話で挫折したと思っていたけれど、どうやら四話か五話くらいまでは観ていたっぽい。小アグリッピナの物語はオペラになっているらしい。いつかぜひ観てみたい。

エーステ夏の公演中止の報。今日は休演日で、木曜にチケットを取っていた。

まず何よりも夏推しの奥さんが心配で、しばらくは呆然としている隣で静かに慰めていたのだけど、僕にできることはなく、各自の仕事に戻った途端に自分も公演を楽しみにしていたことに気がついた。自分よりもつらい人を見て落ち着こうと思い、『13日の金曜日 PART2』のマークとのセックスを目前にうきうき下着を付け替え、香水もばっちり振りかけたのに、身支度の間にマークを殺され、自身も散々怖い目に遭って死んじゃうヴィッキーを見返していたのだけど、こんなの、ヴィッキーがかわいそうだ! 歳をとるにつれて、すごく楽しみにしていたことが台無しになる描写、すごく苦手になった。ヴィッキーとマークは楽しくセックスしてから殺されて欲しかった。マークの後に殺されるカップルは事後すごくいい表情で、充実したセックスだったのだろう。そのあとさっさと一緒に逝けたのも幸せで、ヴィッキーは二人の死体を見せつけられて、じっくり焦らされてから死ぬことになる。まだセックスもしてないのに!! せっかく準備したのに!! ひどいよ!!!

楽しみを不安なく楽しみでいられること。それが難しくなっているのほんとうにいやだし、中止の分の補償はきちんとされるのだろうか、などと心配しないで済む社会であってくれないと本当に困る。おのおのが最高に咲ける世であれよ。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。