2023.06.01

午前中にゲラを戻す。ご褒美のようにしてとっておいた原稿だったが、結局しめきりよりも随分はやくに提出となった。書きあぐねるという状態がいまだに僕はわからず、それはつまり感覚で書いているということで、いつか書けなくなった時しんどそうだと恐ろしい。週末の「非哲学者による非哲学者のための哲学入門読書会」に向けて『哲学の教科書』を繰り返し読んでホワイトボードに書き込みをする。何度も繰り返し読むというのはとにかく書いてあることを書いてある通りに読むには最も簡便な方法であるなとすでに面白い。奥さんはお芝居の配信があると期限めいっぱいまで延々と何度も何度も観続けるのだが、そのたびにツイートする感想の精度が上がっていく。読めない時は書いていないことを読んでいるのだし、見えない時はないものを見つけてしまっているのだ。初読や初見ではこちらも予測や予断をもってしまうから、はらはらやわくわくが幻覚を見せる。あるいは、連続する今のインパクトにいちいち驚いてしまって前後の文脈を捉え損ねる。いちど見通して構造を把握してからのほうが、脈絡を冷静にそのままの形で追えるというのは考えてみれば当然のことだ。僕は芝居の映像を繰り返し観る奥さんをトーマスやアンパンマンに齧り付く幼児のようだと思ったこともあったが、むしろまっとうな鑑賞法であったのだ。そんなことを焼肉ランチを食べながら話す。これをちびっこトーマスメソッドと名付けてもいい。

明日は友達と飲む約束があって、でも金曜だから予約しておいた方がいいかもと店を見繕う。予約はあっさり取れてしまった。台風が来ていて明日から明後日にかけて雨がすごいのだと知ったのはそのあとで、ああ、それじゃあどこにでも入れたなと思う。そもそも明日は飲んでいる場合じゃないんじゃなかろうか。予約もしてしまったし、楽しみではあるのだけれど、すこし友人が心配になる。

頼まれた原稿や勝手に書くものや読書会に向けての準備をして、なにより先延ばしにしていた関西行脚の工程をしっかりめに検討する。初日に奈良と京都、二日目に大阪、三日目が神戸で、四日目はみんぱくに行けたら行きたい。移動中に一冊は読めそう。仕込むべきものを仕込んでいく一日になった。図書館の本の返却期限が来ていたので外に出るついでに注文分の荷物をつくる。クリックポストをふたつ持って家を出た途端に注文のメールをいただいて、あと五分だらだらしていればまとめて出せたな、と思う。図書館で本を借りて、ポストに投函。思っていたよりも予約資料が多くて鞄がぱんぱん。どちらにせよ持ち切れそうになかった。家に帰って奥さんと手分けしててきぱきと梱包。面倒にならないうちに再度ポストへ。

足の二枚爪をどうにかしようと奥さんがヤスリをかけたり、トップコートを塗ったりしてくれる。日々はもっとよくなりうる。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。