2026.07.03

サンプル第二弾が届く。今度は表紙も色むらなくパキッとして、ぼやけていた図表もクリアに印刷されている。文字だけでなくべつの要素を入れる場合、データの解像度を合わせなければいけない。学んだ。これで行きますと連絡する。出来上がりはちょうどさめない社交に間に合うくらいになる見込み。サンプルで物撮りして準備していた提案書に反映し、各書店に営業メール。それから各SNSに告知を出していく。メールはいちいち書いていたが、告知はだいたい同じ文面でいく。掛け率は意固地になって維持しているけれど、その分は価格にはねるわけで、ぎりぎりまで掛け率を上げて千円におさえるか悩んだ。自分で直売の販路を整備するならそのほうがよかったけれど、まずはやはり書店経由で買ってもらいたい。そこをぶらしてしまうとおかしくなる気がした。しかし、じっさい大量かつ継続的に仕入れてくれていた書店が閉じたり、全体の総数が減っているのもたしかだし、心意気だけで取引が決まるわけではない。とはいえこの掛け率を維持するにはけっこうな数を印刷する必要があり、そうなると自前でも販路をつくっておいたほうが現実的な気もする。むしろ直売で利益を確保して卸値を抑えておくという方向もあるかも、とかあれこれ考えてしまう。でも、まあ、それはあとでも考えられることだ。なるべく利益のお裾分けをしたい、個人での得をとるというのはあんまり面白くない、という態度をとり続けるのって難しい。厄介なことにそれは誰かが業突く張りだから難しくなるというのでもない。互いにちょっとずつ合理を求めていくとそうなる。朝日新聞の川久保怜のインタビューを読んで、利益のためではないと言っており、それはそれでどうかとは思うが、価格を抑えて若い人に手に取ってもらいたいというのはよくわかる。僕は抑えるのではなくむしろ上げたうえで書店に還元する額をちょっとでも増やす方向ではあるから反対のようでいて、服を「若い人」に、本の利益を「本屋」にという意味で通じる。

格好いいものに手が出せるだけのお金があると気持ちが上がって何かまたいい方へ向かう。その助けになるのがいいなと思う。二百円程度のことで大袈裟かもしれないが、しかし上乗せした二百円の積み重ねだってばかにならないはずだった。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。