2026.08.07

イベントの夜はいつも夕食を摂りそびれる。家を出る前はまだ早いし、帰る頃には遅すぎる。鮫君とあべさんの三人で行う連続シリーズ「健康で文化的な生活のために」の第一回。『「ホモソ」を見つめなおす——男子ノリは何を生み、何を殺すのか』当日。おふたりは配信準備のために機材のセットアップで早入りしているが、僕は役立たずなので開店時間くらいにふらっと行く。思えばこのタイミングで何かお腹に入れておけばよかった。早い時間から予約なし立ち見でもよいというお客さんもやってきて、すでに予約で満席の会場はますます盛況。今回のテーマへの関心の高さが伺える。ジェンダーも距離感もばらばらでいい塩梅。社交で知り合った人たちも集合してくれており、この一年の集大成感もあった。鮫君が「心の砂地」で培ってきたものの厚みでもあるだろう。でも最終回感はなく、こっから新シーズンという意気込みだ。なるべく誤魔化しなしで、誠実に、でも愉快に。露悪や自虐に振り切りがちな男のホモソ話について、適度にごきげん、適度にシリアスにお話しする稀有なイベントになったんじゃないかと思う。鮫君が盤石の進行をになってくれるので僕はとにかく好きにやろうと思えたし、もうすこし突っ込んでいいかな、と手探りで試していくうち、客席の何人かの表情がもっといっていい、と励ましてくれるようで勝手に元気になった。終盤、カメラに向かって手を振ったら奥さんから家のDiscordでメッセージが入る。柿内さんが手振ってくれたーケイ素的喜び

直前まで客席と演者の線引きについて三人で議論していたのだけれど、今回はちゃんと区切りをつけたことがよい効果をもたらしたと思う。板の上に立つというけじめをしっかりつけること、終演後はフラットに戻すこと。終演後に残った方々とのおしゃべりをしていても手応えはあったし、それぞれの感心の向き先についても見えてきた。今回のようなイベントや、社交で、もっとみんなで話していきたいね。あと数回同じテーマで重ねていきたい。もっと手前のところから、あるいはもっと遠くへと。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。