2026.08.22

『卒業生 冬』から『home』までを一気読みするつもりだったけれどぼんやりしていたら家を出る時間で、『空と原』までしか進まなかった。『O.B.』までは再読で、しかし『空と原』、当時はピンと来なかったけれどいま読むといちばん好きかもしれない。いちど街に出て漢方薬を買いに出るがどしゃぶりで酷い目にあった。せめてものお出かけ気分をあんみつを食べて取り返す。帰って『O.B.』を読み終えもだもだして、これはやっぱりここで完結だと思うよなあとなり、買ったばかりの『blanc』を一話だけ読んでお風呂に入ろうと思ったらしょんぼりした気持ちで入浴する羽目になった。湯上がり、リビングで『blanc』を二冊読み、ずっと情緒がおかしく、最後の三ページでぶわっと溢れて

べそっ

と大泣きしてしまう。このシリーズはプロットだけ見れば甘々な少女漫画の類型のようなのだけれど、美麗な曲線と演出力の剛腕ですごい揺さぶられる。びっくりするほど涙が止まらず、本を閉じてもべそっべそっと収まらない。落ち着いたところで最後の三ページを見返して、べそっとまた始まる。ぼんやりと余韻に浸り、もうこのまま読んじゃおうと歯を磨きながら『home』を読み、ああ、これはまた数年後に続きが出るのかもしれない、もうこうなったらライフワークとして続いていき、『きのう何食べた?』みたいになっていくのかもしれない。そうでなかったとしても、一瞬の煌めきを宝物ようにとっておくのではなく、まじめにゆっくり続けていく方を選んだんだなというような感慨があり、ふくふくした気持ちで眠る。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。