この半月ほど右手の親指がしわくちゃに硬化し、皮も向けてきて指紋認証が通らないので不便だ。
日中に買い出しに出かけると郵便受けに封筒が入っている。連休前、ゆとりソフトという開発会社の方から連絡があって、mokuというスクリーンタイム抑制アプリを試してみませんかというものだった。カウントアップ式のタイマーをオンにするとそのあいだ指定のアプリやWebページへのアクセスをロックするもので、無料でも使えるのだけれど、ユニークなのは有料版だとロック解除のための物理カードが家に届く。この端末をカードにかざさないとロックが解除できない設定にしておいて、カードを別の部屋や引き出しに遠ざけておけば、意思の力だけに頼らずスマホから離れられるという設計になっている。この物理カードが木製なのもぐっとくる。黙々と集中するための木製のカード。通常五千円弱で買い切りのこのmokuカードを送ってくださるというのがメールの内容で、ある日の日記についての感想までわざわざ付してくれており、言及された日の日記は調子よく本を読んでいるのだが、メールをいただいた日に公開されていた最新の日記では本も読めずに延々とiPhoneで王様のパズルゲームに耽っていたから、タイミングがあまりにぴったりだった。こういうのってどうやって探してくるんだろうな、僕がリーチできる人数ってそこまで多くはないだろうけれど、同じようにスマホを置いて本に溺れたいなと思っていそうな人はたくさんいそうで、こういう人が嬉しがりそうという判断はかなり当たっていると思う。じっさい、かなりよさそう、と思い、ぜひぜひとお返事した。それが十日くらい前のことで、そのカードが届いていた。これから買い物に行くというのに封筒を取り上げてポケットに入れて歩き出したのだから、よほど楽しみだったらしい。封筒を携えたままスーパーで用事を済ませ、帰宅してさっそく封を切る。アプリを起動してカードをかざすとすぐに連携が終わる。これで有料版の購入をしたのと同様の扱いになるので、集中モードも複数つくれるようになる。カードを待つ間にすでに作っていた「読書」以外にも「散歩」と「寝ろ」というモードを作り、それぞれにブロックするアプリやページ、休憩時間を細かく設定していく。それぞれのモードをスケジュールに割り振り、毎日決まった時間にだらだらさわっちゃいがちな要素をすべてロックする。そのうえで全部のモードをカードなしでは解除できないようにして、カードは出窓に鎮座する石黒亜矢子「ばけねこだらけ」ビッグぬいぐるみ (にゃす)が大事に両手で抱えている魚の隣にそっと挿しておく。数分間の試用と予行演習を重ね、「散歩」はカメラがあった方がいいよな、だとか、「寝ろ」を毎日問答無用でスケジュールする場合、外で飲んでて終電で帰る時に乗り換えアプリが開けないのはまずいか、だとか、あれこれといじくり、こだわり、しかも遊び納めしておこうと王様のパズルを名残惜しんでやりこんでしまったせいもあって、結果として今日のスクリーンタイムはいつも以上の惨状ではある。しかし、月の週平均をならすとだいたい日に六時間、多い時で八時間か。異様だな。いったん色々をやりきり、散歩に出かける。明日からの本格運用でどうなりそうか、楽しみ。
名残の鮎は子持ちで、卵の方に栄養を持っていかれて身は痩せていたからなんだか脂ののっていないししゃもみたいだ。
