2026.09.27

母が出演したラジオのローカル番組を聴く。朗読の発表があり、ふつうにクオリティが高くて感心してしまう。演出ノートみたいな感想を長々と送る。母が母としてでなく個人として舞台に上がり、そこで紹介される個人史にとっては子供たちは当然中心を占めるものではないのが新鮮で妙に嬉しかった。親はどうしても、己の発生と同時に親になってしまうので、親以前のそのひとたちを知ることが難しい。べつに親が親でない時間も、一個人としていきいきとしていたのだとわかるいい時間だった。しかし、改めて聞いていると、子供が幼稚園に入ったり、独り立ちしたり、養育のフェーズが変わるたびに何か新しいことを学び始めていてすごい。

髪を切ってもらい、ジュエリーショップ併設のカフェでやたらうまいチョコミントアイスを食べ、小雨が降るなか公園を散歩し、奥さんが気になっていたというサングラスの店に偶然行き当たりあれこれとレンズを試させてもらう。仕事を終えた友人と合流し、カフェでおしゃべり。これってどう思う?という話題があり、それはふたりにとってもけっこうタイムリーな問いで、こういうときの奥さんは、大事なことは何回でも言う。変奏しながらひとつのことを繰り返していく。奥さんがそのように自身の主題を続けていくので、僕は相手の言うことを文字通りに受け取って、それに即した話を返していく。しかし、何を言っても奥さんの話の方が大事な気がしてならない。また台風ができているらしい。コーヒーの飲み過ぎでくらくらするし、薄めるために水を飲むと膀胱も限界にちかい。北千住の沖縄料理を食べていたが、換気扇の真下の席で、むしろ排気されてくる古い油や煙の匂いで具合が悪くなってしまう。

この三日くらい、久しぶりに明け方まで話をすることができていて、ふたりで重たく暗いところに細い道筋をつけていくような時間を過ごすことがまだできていることが嬉しい。ひとつひとつの言葉の選択を、妥当性や正当性よりもとにかく体重が乗っているかどうかだけをよすがになしていく。四時だった。体が震える。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。