2021.10.07(2-p.166)

なんだかはっきりしない天気で、朝からなあんにもやる気が出ない。せっかくの休日だけれど今日は知的作業ができるコンディションではなくて、本を読むのも書くのも諦めてそそくさとチェイテ城に向かう。FGO のAP が尽きたらEXTELLA で遊ぶ。夜は奥さんと月姫を進めるつもり。奈須きのこの過剰摂取でますます体調を崩しそうだ。いい加減に布団から出たい。家から出たい。勤務日の奥さんも集中できなさそうで、僕が家でうだうだしているのをいいことに、構ってあげる、というていで賃労働をサボり続ける。そもそも僕は今日ユニクロのパンツなのが悪い。パンツのいいやつを知ってしまったらもうユニクロのパンツは早く処分したくて、だからもうゴミだ。今日はゴミを履いてる。だからなんもやる気出ない。このままだと共倒れなので、昼ごはんとパンツを買いに隣町まで歩くことにした。殊勝な心がけではありませんか。

パンツを三着買い足して、フードコートでブリトーをテイクアウトする。上着を羽織ってきたが、帰りは晴れてきてすこし汗ばむようだった。ようやく気持ちのいい気候になってきた。歩くと血行と一緒に人間もよくなるようで、奥さんとブリトーを食べたら微かにやってきたやる気を捉まえてRyota さんとのおしゃべりをチェックしつつ配信準備を整えていく。Ryota さんは落語の経験もあるからか雑談でも話芸という感じで、淀みなくちゃきちゃき喋ってそれでいて理路も整っているからとっても聴きやすい。僕が、ああとぉ、そのぉ、なんだろ、みたいにずっとウニャウニャしているのが際立つ。でも別に僕のことは良くて、とにかく聴きやすいなあ、と感嘆しながら聴いていた。言及される作品をまとめていくと、改めて「オブ・ザ・デッド」多すぎだな、とわかる。

夕方になってまた頭が痛くなって布団に籠る。種火をあげるとお行儀よく「ありがとうございます」が言えるメカエリチャン可愛い。気がついたら眠っていて、汗ぐっしょりで梅核気っぽくて散々だった。めそめそしていると奥さんも仕事を終えてやってきてぐんにゃりと横たわる。二人でじっとしていると同居人が帰ってきて夕食を作ってくれる。ありがたい。食後、同居人がお風呂に入っている間に奥さんと二人でYORIKO先生の棘下筋トレーニングを動画を見ながら行った。背中の肩甲骨の下にストレッチパワーが蓄積されているのを感じる。背中から姿勢が整うと気持ちも整うというか、こういうときこそ億劫なのを押して身体を動かして非言語な自問自答というか、要は体のことを感じて動かして整えてあげるべきなのだよな、ともう5,232回目の気づきを得る。どうせわかってても億劫なのだ。今日は奥さんが無理矢理引っ張ってくれたからできた。正確には、奥さんからの提案を渋ると奥さんは悲しそうに取り下げかけたので、ちがう! こういうときはこちらに意見を求めないで無理矢理始めちゃってほしい! とお願いして引っ張ってもらった。引っ張ってもらえてよかった。このエクササイズは四〇分あるよ、と言われた時は本気で後悔したけれど、やり終えてみればすっきり爽快だった。

それで汗を流すために脱衣所ですっぽんぽんになって、眼鏡をかけたまま風呂場で毛の処理をしているとガツンと揺れた。日記では伏せてきたが僕らはお風呂に一緒に入るので、同じく服を脱ぎ始めていた奥さんが脱衣所でうひゃあ、と声をあげる。もともと高層階にある部屋だからふだんから揺れは大きく感じる。とはいえ立っていられないほどなのは初めてで、浴槽のお湯はバッチャンバッチャンすごい勢いで溢れていく。とりあえず服着よ! と、なんどもよろめきながらなんとか揺れの合間に服を着て、廊下に出て扉を開け放つ。実はお風呂に入る準備をしながら、岡田育さんのツイートで知った岡崎体育の新曲のMVの再生を始めてしまい、奥さんに、え、入らないの?という顔をされながら二人で脱衣所に突っ立ってパステルなおじさんのダンスを眺めていなかったら二人ともずぶ濡れ全裸で風呂場に閉じ込められていたかもしれない、ありがとう、岡崎体育。トーニョの水槽もバッチャンバッチャンだっただろう。周りはびしょ濡れだったが案外大丈夫そうでよかった。同居人も奥さんも僕もトーニョに、びっくりしたねえ、と思わず声をかける。アッと誰かの声でリビングと隣り合う本の部屋──さっきまでYORIKO先生の言いなりになって仰向けになったり腹這いになったりしていた部屋だ──で、一番大きな本棚が見事に倒壊していた。ア、アアアアアアアアア、と僕はほんとうに声をあげて、その場にへたり込んだ。ア、ア、ア。涙も出ない。とにかくぶちまけられた本を一刻も早く平置きにしてやりたい。それしか考えられなかった。奥さんと同居人は余震の有無の確認やガスの元栓の確認などてきぱきと進めていたが、僕はもう本のことしか考えられなくて、まっさきに──iPhoneで写真を撮った。それでTwitterにあげた。災害時わざわざ惨状を写真に撮ってアップする人の気持ちが僕は全く理解できなかったが、あれはそうでもしないと立ち直れないというか、受けたショックを客体化できないのだ。ツイートはショックの外在化である、という洞察を得た僕は、崩れた棚と本の前で項垂れる様子を奥さんに写真に撮ってもらい、それぞれの実家の安否確認のLINE の返事として送信した。奥さんと協力してとりあえず本棚をどかして、下の本を丁寧に状態をチェックしながら重ねていく。どうやら本は無事なようだった。綺麗にスコーンと倒れたらしい。棚はそうして前に置いてあったちゃぶ台を破壊し、ちゃぶ台の上のミッフィーちゃんのガラスコップを粉砕した。コップの中身はそこまでなくて、だから濡れてしまった本もそこまで多くはなかった。僕は心を奮い立たせるためにApple Musicでフランシュシュを流しながら、片付けを進めていった。まずはちゃぶ台の上のガラス片を片付けて、周りの本をどかして、ちゃぶ台を畳んで周囲の掃除機がけだ、と気がつくまで、とにかく目につくところから本を拾い上げては積んでいた。どん底、ふりだし、それもSAGA。燃え尽きようとも果たしてみせる。いま、反撃の時!

Twitterでは知らん人から「悲惨だね(飛散だね)……|д゚)」というリプライがついていて、ああ、これが殺意か、とわかる。駄洒落にイラっとすることないのだけど、初めて殴りたくなった。大丈夫、一生許さない。こいつだけではない。フォロー外から引用RTやリプライでなんかうまいこと言ってやろ、みたいなダサくてサムい人たちのことは例外なく呪う。本気で呪うから覚悟しろ。どうせ見てねえだろうけどな。怒りでなんだか元気が出てきた。しかしお前らがクソでサムくてダサいことはなにひとつ変わらないからな。心配のリプライをくださったフォロワーの皆さんのことはだいぶ好きです。いつもありがとうございます。黙々と片付けを続ける。額装されたネロちゃまの絵が無事な姿で本の山から掘り出された時は安心で泣きそうになった。同居人がココアを淹れてくれて、ほっと一息をつきながら、すっかり汗だくだ、シャワー浴びたい、もうすこし片付けたら、シャワーを、あ、その前に日記書かなきゃ、というとみんな苦笑した。習慣の力ってすごいね、と呆れる。なんとか本の整理と部屋の片付けを、今日のところは、というところまで終わらせて、ほんとうに日記を書いている。明日仕事? まじで言ってる?

柿内正午(かきない・しょうご)会社員。プルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、「家」の別のやり方を模索するZINE『ZINE アカミミ』などを制作。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。