2021.10.23(2-p.166)

プリンが食べたい。かための生クリームが載ったやつ。

昨晩眠る前に切ないほどにもたげていた強い欲望は、朝起きるとほとんど霧散していた。

吉田悠軌『一生忘れない怖い話の語り方』で何度も愛憎半ばに褒められていた京極夏彦「成人」目当てで借りた『怪談実話系ベストセレクション』の目当ての一編だけを読む。ううん、どうなんだろう、本文中で怪談観をあからさまに開示するのは野暮なのではなかろうか。期待しすぎたのかもしれない。それから『第二脳釘怪談 呪殺』をちびちびやりながら、昨日Amazon primeで「心霊ドキュメンタリー」で検索して出てきた『心霊×カルト×アウトロー』を観てみる。図らずも谷口猛監督作で、次の『心霊マスターテープ』は彼が手がけるらしい。来年のそれが一層楽しみになるいい作品だった。悪そうな奴らがたくさん出てくるのがいい。HIP-HOP の自己演出って確かにフェイクドキュメンタリーっぽさあるよな、とか。そこから一気に『心霊マスターテープ』づいたらしく、今度は『心霊玉手匣』の一作目と二作目をGYAO! で。チャプターごとに区切られていて、自動再生がいちいち一個前のエピソードを再生してくる最悪の仕様でうんざりしかけたが、本編はとてもよかった。岩澤監督作がいちばん『心霊マスターテープ』っぽいのかもしれない。語りが巧い。なんだか青春の燦きに似たものを随所に感じて、あ、と思う。そうか、仲間同士が衝突や馴れ合いを重ねながら調査を進めていく心霊ドキュメンタリーって『水曜どうでしょう』っぽさがあるんだよな、そりゃ好きだわ、と気がついたのだ。

今週は夕食におでんが出て、名古屋のおでんは味噌おでんだから味噌が入っていないおでんは何か抜けてる感じがする、という話から、おちょぼ稲荷の味噌おでんともつ煮が美味しいんだよなあ、という話をしていたところだったので、『第二脳釘怪談』におちょぼ稲荷が出てきてなんとなく嬉しくなった。名古屋だと思い込んでいたけど岐阜だった。名古屋人はこういうところがある。岐阜や長野や三重はなんとなくある程度名古屋だと思っている。小島信夫が日本のだいたいは美濃だというのと同じようなものだろうか。

たまに他人の日記を読みにいって、僕にとっていい日記と面白くない日記の違いってなんだろうな、と考える。たぶん僕は本が好きな人の日記はそんなに面白くない。僕は本が好きだけれど、それ以上に本を読んで日記を書く自分が好き、というか、自分のことを好きでいられるように、本を読んでいる自分や日記を書いている自分のことは基本的に好きだから、本を読んだり日記を書いているところがある。僕はたとえば読書の喜び以上に、自分のことをせめて自分では好きでいようとする意志に惹かれるのだと思う。だからある行為をしている、あるいはある環境にいる時の自分は悪くない、という気恥ずかしい誇らしさが滲んでいるような文章が好きなのであって、ある行為や環境について書かれてさえいれば面白がれるというわけではないようなのだ。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員。プルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、「家」の別のやり方を模索するZINE『ZINE アカミミ』などを制作。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。