2021.12.07

賃労働が忙しくなってきた。そんななか新刊ZINEまわりの実務や、来週に迫る青木さんとのトークイベントの準備や、そのほか楽しい予定の数々を前にかなり圧迫されている。いつでも未来に圧迫されている現在というのは貧しい。それなのに。なんだこれは!走り出しそうだ!くそっこれだから年末ってやつは!

そういうわけで在宅勤務の途中で長めの休憩をとって虎ノ門へと走った。SPBS に直接納品に伺うためだ。ほとんど手ぶらで、段ボール一箱抱えて突然押しかけて行って、慌ただしく納品して帰ってくる。なんだろう、この多動っぷりは。すこしだけれども店長さんとお話ができて嬉しかった。しかしやはり、慌ただしい空気というのはよくないな。丁寧さを損ねる。もっとちゃんと落ち着いて、ひとつずつ真摯にやっていきたい。おかげさまで新刊はすでに17軒の本屋さんに居場所を与えてもらっている。それは「17」という数ではなく、ひとつひとつの素敵なお店と、ひとつひとつの関係を結んでいるということだ。これをいくつかの数字のうちの「1」としたらもう僕はおしまいだ。わざわざ賃労働とは別にある種の勤勉さを発揮して、がさつで事務能力もからっきしな僕のなけなしの誠実さを注いで本を作ったり届けたりしているのかって、そうした数の論理になんでもかんでも回収されてしまうことへの抵抗ではなかったか。

帰ってまた真面目に労働。終えてZOOMでRyotaさんとゾンビ談義。今回扱う二作はどちらも僕は好きじゃないのだけど、好き嫌いとは別のところで面白がったり楽しめたりするのが批評だとか知性の活躍しどころで、かなりいい話ができたんじゃないだろうか。好きな作品って「尊い……好き……」しか言えないことも多くて、そうでもない作品の方が豊かな語りを引き出してくれたりして、語るのが楽しい作品と心底大好きな作品が一致することって案外ないような気もする。今日のお喋りではなぜ僕がゾンビ映画が好きなのかというか、ゾンビ映画に何を求めているかが一層クリアになったと思う。すっごく面白かったな。聴いてくれる側もそうだといいのだけど。個人の快不快でないところで語るという、とても大事なことをしているはずだった。

ネットプリントの第二弾の準備もほぼできた。登録から終了までの期限もあることだし、日付が変わる頃に発表しよう。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。