2020.12.03(1-p.365)

アーレントの『人間の条件』を読んでいると、よく言われるように公共みたいなことを考えるよりも、その前提となっている私的領域のことをよく考えるようだった。たとえば、デリダの『歓待について』で、遠隔通信技術の発展によって私的領域が拡張された結果、家の外までもが自分の領域のように錯覚してしまうから人々は異邦人嫌悪を募らせていくのではないか、みたいな記述を思い出す。いまのインターネットは公共だと思っている人と、私的空間だと思っている人とが不幸な同居を強いられているなあと思って、それでさっそく『プライバシー・パラドックス』を読み始める。面白い。久しぶりにある本から問いが生起して、そこから別の本に発展していくような幸福感がある。マルクスはアーレントを呼び寄せて、アーレントは武邑光祐を呼び寄せた。アーレントはまだまだいろんな人を呼び寄せそうで、頼もしい。

夜は今夜はポイエティークRADIOの録音。友田とんさんをお呼びしておしゃべり。ZOOM の仕様が微妙に変わっていて少し焦った。録画ボタンを押す前のアイスブレイクの十分間に、三度ほど友田さんとの通信が途絶えてしまって、かなり不安だったのだけれど、録音中はぶじに──多少の音声の乱れはあったけれど──終えられてよかった。大好きな『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する』について、著者とともに深掘りしていく贅沢な時間だった。いい話ができてるなあ! と思う瞬間がいくつもあった。将来なにかの媒体で「総特集:友田とん」が組まれるまで、友田さんの作品や活動についてここまでがっつり切り込んでいく番組は存在しないだろう、という謎の自信が今はある。さすがに勘違いかもしれない。

人と喋るのは楽しいな、もっとポッドキャストを口実に色々な人とおしゃべりがしたい。改めてそんなことを思う。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。