2020.12.30(1-p.365)

昼まで寝る。寒くて布団から出られないので、タブレットで『美女と液体人間』の視聴を始める。美女と液体人間が出てきた。ずっと寅さんを見ていたせいもあるだろうが、昭和のカメラが切り取る色香にどんどんぐっとくるようになっているみたいだった。

山もオチも意味もなく投げっぱなしで終わるようなのを読みたい、と湯船に浸かりながらBOOKSHOP TRAVELLER で見つけた『水木しげるの遠野物語』を読んで楽しくなってくる。すごくいい。これを描いた時すでに九〇手前であった水木しげるの泰然としているようで熱のある凄みに小島信夫を思い出していた。それでBOOK AND SONS で買った『静温な日々』を始めた。小島信夫も妖怪みたいで好きだ。間が抜けているようで、底抜けに怖い。

うさぎや宇都宮駅東口店で買った『Pollyanna』を捲りつつ『タイガーキング』を流す。エピソード2と3。手加減なしの「世界まる見え!」のザ・ベストみたいなえぐさで、ヒョエエと言いつつ観てしまう。手元ではほっこりとした思い出話が繰り広げられていて、「アメリカ」のあまじょっぱを同時に浴びた。名古屋では青木さんと糸井重里へのモヤモヤを話したけれど、それはそれとして僕は『MOTHER』が大好きで、誰かがこのゲームの話をしているのを読むといつもウルっときてしまう。作品がいつまでも素晴らしいことと、その作り手がいつまでもどこから見ても全肯定できる人物かどうかは、まったく関係がないよな、と改めて思う。

ON READING で買った『生活の発見』を箸休めに挟みつつ、『サラムボー』も始める。長野と較べてカルタゴの騒がしさはすごい。奢侈、蕩尽、しかも他人の財。未払いの報賞の決済が先送りにされ続け、債権者の横暴と不安がどんどん膨れ上がっていく様に『負債論』の数々のエピソードがどうしても想起される。国家は戦争を産み、戦争は負債を産み、負債は奴隷を生む。しかし饗宴というよりも狂宴というべきバカ騒ぎっぷりで、のっけからどんどん楽しい地獄絵図だった。命懸けのめちゃくちゃな浪費は楽しい。マイケル・ベイの映画を見れば誰もがわかることだ。熱気に疲れると、いつだか岸波さんの本だったかツイートだったかで知った『松下育男 詩集』をパラパラとやる。

夕食の後は傭兵たちの豪快な浪費に当てられてなんか豪勢なもの観たいな、と思い、なんかお屋敷でみんなが高そうな服着てるやつ観よ、くらいの気持ちで『ナイブズ・アウト』を観て、あまりの面白さにニコニコした。奥さんと、これは面白かったねえ! とはしゃぐ。

このままの流れで、大晦日は『サラムボー』と『静温な日々』とで交互浴をキメることにした。破綻すれすれのところで行われるハイテンションなドンチキ騒ぎと、既に破綻しているようにしか思えないのにいつまでもチルい退屈。なにが整うというのだろうか。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員。プルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、「家」の別のやり方を模索するZINE『ZINE アカミミ』などを制作。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。