2023.11.25

昨晩書いた劇評がさっそく公開されていて、そこそこ面白がってもらえているようでうれしい。自分で読み返しても、へえ、おもろいじゃん、と思えたので気分がよかった。劇評を再構成するような形で日記を書く。

本日の新宿のルノワールの会議室二号の利用者は薔薇十字読書会御一行様でござい。十人部屋に十人がみっしりと詰めかけ、きょうびカラオケでもこんなぴったりサイズに押し込まれないよ、と誰かが苦笑する。久保竣公なら大喜びなのにね。さっそくとびきりの会員証が配られる。これだけで大満足。主催の蛙坂さんから時計回りに自己紹介がてら「俺と夏彦」のエピソードについて話していく。一巡するだけで映画一本分である。小学生の頃からお付き合いしている人から、昨日はじめて京極夏彦を読んだという人までもいて、鵼でデビューというのはどんな感じなんだろうと誰もが色めきたった。ミステリとして入るか、妖怪蘊蓄参考書として入るかで、印象が大きく変わるのだろうなと思う。僕は後者で順番も最後だった。皆さんのお話を聞きながら考えたことを話そうとあれこれ頭をはたらかせていたのだけれど、いざ話す段になるとばかみたいな早口でぺらぺらぺらぺら喋っていて、背後から冷静な自分が、え、めっちゃ早口オタクやん、と引き気味だった。そうか、俺はこんなに強火であったか。その後の自由討論の時間でもあることないこと熱弁を振るっていたことはたしかなのだが、発言内容は何一つ覚えていないといってもよい。そういうことにしておいてくれ。夕方の閉会後、会場の外で会計を待っているとき、オルタナさんに、まだまだ話し足りなそうでしたね、と言われて、うへえ、と赤面した。

美味しい中華料理屋で五千円の食べ放題三時間。たらふく食べ、それなりに飲んだ。和やかにおしゃべりして、こんどは羊を丸ごと食べたい。珈琲貴族できりっと締めて解散。コーヒーで終えるというのは格好いいなと思う。

帰りの電車で、左目だけ謎に染みて涙めっちゃ出る。突然、社交のパワーが消尽されたことを自覚する。もうずっと家にいたい。しばらく誰とも話したくないと真剣に思うが、あすも知らない人とほがらかに言語を往復させる予定がある。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。