2024.01.22

朝起きると午前から昼過ぎまで会議が連続していてゆっくりお昼を食べるのすらままならない。FGO のイベントの消化や、月曜だからジャンプもあるし、遅れている録音もしなくちゃならない。ZINE の発送もいくらかある。なにより沖縄の日記も溜まっている。すこしは旅のクールダウンがあるかと思いきやすごい慌ただしさだ。奥さんは奥さんで朝から洗濯を二回まわし、ベッドのシーツまできれいにした挙句、各書店へ発送するぶんの梱包まで終わらせてしまって、引っ越しプランもバリバリ策定し始めた。そんなところを見せつけられては僕も労働と日記に勤しむほかなかった。リフレッシュとか言いたくない、リフレッシュして生産性が上がったなんて言いたくない、などとぶつくさ呟きながら奥さんは確実にリフレッシュしており、生産性が上がっていたので怖かった。夕方ごろようやく落ち着いて、日記も終わらせた。楽しい日々は日記だと面白くない。それは日々のいいところというのは、日記に記録されるような内容とは別のところにあるからだ。すぐには言葉にできない、直接名指すことのできない機微。それを毎日の日記に表そうとするとものすごく面倒で、それでは続けられないだろう。もっとてきとうに書かなくてはいけないのに、しんとした満足のある一日は、目の再現を要請してくる。すぐさま言葉に変換できるような便利な名詞や運動の記述に頼ることができず、とにかく見えているもののほうを動かさなければぼーっとする満足は書きえない。いい日を過ごすとだから日記では納得できなくなる。こちらがどう動いたかではなく、こちらが止まっている間のまわりの蠢きを再現することを欲望してしまうから。

写真を見返しながら日記を書いていて、すでにまた行きたいと思う。夕食は豚ロースと白菜の酒粕金柑煮、豆腐と茄子の味噌汁、ポテサラ、納豆ご飯。二〇日のタマ・トンガとEVIL の試合を見返す。浜比嘉島ではこれを見ながらEVIL の必殺技がEVIL という名前なのもいいよね、と青木さんと話していて、まあ大外刈りなんだけどね、と言っていたのがじわじわずっと面白い。

録音はうまく噛み合わず不発。僕が勇み足になると奥さんはそれをやんわりと気づかせたり止めるような甲斐性はないからお互い平行線で譲らないまま暴走して終わることになる。奥さんからしてみると録音前に話していたことと違うことを話し始めるから梯子を外された気分で不服である。宝くじも当たらなかったし、むしゃくしゃした気持ちで1800円ぶんの夢だった紙切れをびりびりに破いてみせて、これが無意味な暴力だよ、と凄みを効かせた声で教えてくれる。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。