2024.01.27

岸波さんから柿内さん向きな気がするとDM をいただき、本屋開業日記と一緒に取り置いてもらった『路上の抵抗誌』を買いに機械書房に出かける。あれこれとお話ししながらイーガン『万物理論』、『私が諸島である』、『IMONを創る』など気になる本を抜いていく。時評の話をして、なんか勉強になる本を、と相談するとどんどん教えてくれる。『すばる』が2015年と16年、二年連続で批評特集を組んだ2月号、そのなかの田中弥生が『三四郎』を論じたものがすごいらしい。佐々木敦だと『小説家の饒舌』がいちばんとのことで、これらも合わせていただく。コーヒー二杯分の雑談がたいへん楽しかった。

秋葉原のメロンブックスにも寄って『この同人音声がすごい!2023』も入手。レジに並ぶ列が18禁の棚を経由するから、待つ間にさまざまに誇張された人体を鑑賞する。もはや原型を留めていないほど変形された、しかしなぜか肉感的に感じられるフォルムや彩色の選択の多彩さにいつも驚く。なぜこれがエロく思えるのだろうか。エロ漫画の方法というのは、音楽でいえばヘヴィメタルやノイズのようなものだろうか。ひずみや歪み、音量の大きさや演奏の速さがそのまま価値に結びつくような。それは人体が道具を通じて実現する自己破壊の欲望の表出なのだ。うるせえ音楽を爆音でかけながらエロ同人を濫読するというのは一種の瞑想体験になりうるかもしれない。『IMONを創る』を読んで、面白かったので『I【アイ】』をKindle で買って読む。寝込んだ。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。