休日。やたら手続きや展開が複雑な夢を見ていた。早稲田松竹っぽい劇場で観たい映画がかかっているから出かけていくのだが満席で、スクリーンの裏側からこっそり潜り込めばいいと教えられてやたら低い扉を腰を屈めて入っていくと、段差や階段が入り組んでいて一向に客席に辿り着かない。ぐねぐね狭苦しい通路をようやく突破すると映画はもうクライマックスで千匹のザリガニが顔を真っ赤にして鋏を天に掲げているシーンで、あまりの格好良さに息を呑むとバックヤードの天井に頭をぶつけてしまうというようなもので、目が覚めてから奥さん曰く、けさの寝相けっこうすごくて片足ベッドから落ちてたよ。じっさい上半身は枕に対して六十五度ほど斜めになっていた。夢ならではのもつれるばかりでもどかしい足運びの感触と、ザリガニのバンザイがつよく印象に残っている。昼近くまでうだうだ眠りこけている間に奥さんはゴミ出しと洗濯を済ませていて、ほんらいは出社の予定だったはずだが在宅で労働も開始していた。
僕は二階の寝室から書斎へと出て、ほとんど一日そこで本を読んで過ごした。文芸誌の八月号の読み残しを消化し、めぼしいものを読み返し、ぎりぎりまで寝かしていた時評を仕上げて送付する。献本いただきつつもなかなか着手できていなかった本を読み始める。さっと目を通しててきとうにコメントすればいいかと後回しにしていたのだけれど、読み始めると止まらず、おもしろいな、と思う。合間にふつうに読みたい本もいくらか読む。先月末に読んだ川上幸之介『パンクの系譜学』や『スピード・バイブス・パンチライン ラップと漫才、勝つためのしゃべり論』が面白かったので、その流れで今日からは『ベトナムの大地にゴングが響く』だ。朝ごはんもタイミングを逃し、お昼も面倒でスキップし、コーヒーだけ飲んで夜までなにかを読んでいた。こういう休みがいちばん嬉しい。もともと奥さんも家にいない予定だったから、きょうはこうやってめちゃくちゃな過ごし方をしちゃおうと思っていたのだ。退勤した奥さんが階下から迎えにくる。夕食も作りたくなかったのでファミレスに出かけることに。お出かけの流れでとかではなく、自炊をなしで済ませるための外食は楽しく、ドリンクバーでのんびりしながらサラダから肉まで進めていく。にこにこだらだらして、帰宅してお風呂もサボっちゃうことにして、DDTの試合を一緒に見る。今朝の夢のザリガニのイメージ源は、上野勇希の決めポーズだったな、と気がつく。