2021.04.21(2-p.53)

すっかり暖かくなっていやがる。上着を羽織らずに出て首筋に感じる日差しの強さに日焼け止めを塗り忘れた後悔を覚える。きょうも『BEASTARS』のことを考えていた。セブンのことだ。自分の会社にも「ラムちゃん」のような最悪の差別がまかり通っていて、出くわすたびに僕はオエッてなる。自認としてはセブンとレゴシが半々だ。なかば意地で「会社員」のなかに混じっているところがないとはいえないし、その程度の適正でもなんだかんだやっていけてしまうのは僕の社会的属性ゆえであることも事実だ。中村さんは中庸であることを「ずるい」と評したが、そうなのだずるいのだ。僕は小賢しく卑劣な悪党でもある。それだけだとも言えないが。誰もがなにかしらの属性を帯びていて、それは助けにも枷にもなりうるが、なんにせよ自分で選び取ったものではない。幼い頃から先天的な特徴で人を差別するのはよくないと教えられてきたが、先天的でない属性などありうるのだろうか。自分では意思を持って選択したと思っているものが、そう選択せざるをえないような状況や構造がなかったと言い切れるだろうか。僕は最近自由意志というものをあまり信じていない。ジェーン・スーがいうところの「ホルモンのいいなり」な部分が必ずあるし、その日のパフォーマンスは天気でだいたい決まる。逆卷しとねの連載が楽しみでいる。

『BEASTARS』のいいところは肉食/草食という二項対立をそのまま男/女という二項対立に翻訳すればいいというものではないところで、社会的に二分されたロールがそのままもう一枚重なっているというところで、そうやってさまざまな要素が個人には幾層にも覆い被さっているということをちゃんと考えられるようになっていることだ。二つの極があってパターンが少し複雑になる、みたいなところで満足せずに、さらには各種の生態をも重ねてくるからよりいっそう現実に近いところで考えることをシュミュレートできる。きのうはそれがイブキとジュノで、今日はセブンとレゴシだった。今日はアニメも奥さんの観ている続きから観て、ちょうど好きなシイラのエピソードだった。これとビルの卵の話がほんとうにいい。こういう挿話もちゃんとアニメになっているのは嬉しい。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員。プルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、「家」の別のやり方を模索するZINE『ZINE アカミミ』などを制作。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。