昨日一日中寝ていたのにしっかり八時前まで眠り、目を覚ますと動けそうで安堵する。きのうは睡眠を優先したので今朝は荷造りから。一泊なのでそこまでのものではないがスーツケースに二人分の着替えなど常時携帯するほどではないものをまとめておく。ポメラとMacBookで迷い、ポメラにする。体力が落ちているからこまめに書き継いでおいた方があとが楽だろうという判断。朝食は何を食べたのだったか。まだ固形物を食べるのが少し怖いが、腹に入れたものをすぐに下すということは昨日の時点でなくなっていた。なんとか新潟のおいしいものをいっぱい食べたい。
上野まで出て、井上さんへのお土産を選ぶ。他の皆さんに配るものも悩んだが、都合どれだけの人にお会いできるのか、そもそも新潟よりもおいしいものなどないだろうとわからなくなり断念。地下にぐんぐん潜ってときに乗る。正午をまわり越後湯沢あたりから雪景色になり、わりあい春の出立できてしまった、病み上がりなのに、と慄く。長岡に近づくにつれ山がちなところから平野へと変わり、雪解けも進んでいったので安心ではある。長岡駅には十二時半には着いた。ロッカーは七〇〇円のものしか空いておらず、両替は改札前のニューデイズでお願いする方式で、奥さんにロッカーを確保してもらいつつニューデイズへ早足で急ぐ。身軽になってどうしましょうねと駅ビルのお土産ショップを覗くとすでに面白い。米所というのはごはんも酒も団子もせんべいもおいしそうだ。醤油なんかも充実している。うきうきしてきて、新幹線でも大福を食べて大丈夫だったし、コインは五枚といえどもシェアもできて二枚必要なお酒もあるようだから飲みきれないといことはないだろうし、やっぱり行っちゃおうよ、ということで、ぽんしゅ館にするすると吸い込まれてゆく。県内限定というものをねらって呑んでいく。メロンやバナナのような、という形容はよくあるが、まろやかな膨らみのある甘みがあって、アテの味噌や塩を舐めながらやると味がきりっとしまって輪郭がはっきりする。うまい。もう呑める体調っぽいのも嬉しく、にこにこやった。この時間から盛況だ。みんなごきげんでいい。青木さんは二時半ごろの到着ということで、富山から長岡はやはり遠かったとのこと。そりゃそうだ。一階のお店でへぎそばランチ。さすがにタレカツは控えたが、堪えきれず奥さんからふた口もらう。念の為トイレにはこまめに向かうが、もう心配しなくていいのかも。やや張っていてガスっぽくはある。
青木さん来てニューデイズへ走る。アオーレ長岡は役所と体育館が一緒になっているようだった。雰囲気はすみしんアリーナに似ているけれど、客席のつくりは段違いによく、二階席だがものすごく見やすそうだった。NEW JAPAN CUP という春の大会の決勝戦で、同じ会場で準決勝が昨日あった。僕は臥せっていたので見損ねたのだが。第一試合はKONOSUKE TAKESHITA のもつTV王座へのオープンチャレンジ。誰が来ると思う?と青木さんが問いかけるが何も考えていなかった。そんな余裕がなくとにかくここに辿り着けただけで御の字だったからだが、SANADAかなあ、などとうきうきしている青木さんに釣られて誰だろうなあと考えていたら楽しみになってきた。新潟といえばSANADA、そして裕二郎なわけで、裕二郎の可能性は高そうだ、カードを調べてみるとたしかにいないのだ。これはそうだったら盛り上がるぞお。そして遂に開演時刻。TAKESHITA入場。会場での人気はしっかり厚く、あれこれ言われがちだけれどやっぱり応援しているよと頼もしい。そして、相手の番だ。HOUSE OF TORTUREの入場曲がかかり、場内の温度が上がる。これはやはり、いや、出てきたのはチューズ・オーエンズだ! いやいや、あとからやはり高橋裕二郎も出てきた! ふたりいるぞ!と笑いが起こる。タッグマッチじゃないからどっちかだけだよ、とレフェリーに制され、とぼけるオーエンズと裕二郎。白々しくじゃんけんで決める。裕二郎だ! 新潟出身の裕二郎は新潟での興行で異様な歓声を得ることで有名だ。ヒールなのに、ふだんと逆転して、棚橋弘至との試合で棚橋相手にブーイングが起き、裕二郎が技を決めるとやんやと大はしゃぎ。そんなすてきな光景が見られるなんて! じっさい、この第一試合の盛り上がりがこの日の絶頂だったといってよいだろう。いやあ、いいものを見た。しかも裕二郎は先日の海野戦で過去の技の引き出しを解禁しており、より一層かれの一挙手一投足への興奮がいや増していた。この日はどの試合も粒揃いで、満足感が高かった。やはり新日本は現地観戦がよいような気がする。映像よりも空間に映える肉体とパフォーマンスだ。ジェイク・リーの上背とか、すごかったもんなあ。けっこう長めにTAKESHITA が解説席に座っていたから配信で見返すのも楽しみ。決勝戦もいい熱戦だった。しかし新潟へと向かう新幹線の中で話していたのは、UNITED EMPIREはいったいどうしたらいいんだということ。青木さんが、僕がプロデュースしたい、と言っていた。
新潟駅について、古町のゲストハウスをとっている青木さんといちど分かれ、駅前の東横INNへイン。青木さんがゲストハウスへと歩いている時間を利用して仮眠をとる。夜は井上さんが通っているというお店をとってくれているということで、たいへん楽しみだった。今のうちに体力を回復しておかないと。バスの乗り場で慌てふためいたりしつつ信濃川を渡り旧市街へ。Bar Book Box の前でかわいい後輩と十年以上ぶりの再会。大学時代に束の間一緒にお芝居を作って遊んだ彼女は、地元に戻って今も演劇を続けているというのだからいつもすごいなあと動向を追っていた。あえて嬉しい。古いビルの階段を三階まで上がるのだが、この感じが蔵前にあったH.A.Bを思い出す、と思っていたら奥さんがH.A.Bを思い出すねえと言うので自他の境界が揺らぐ。二人で思い出していた。黒板には達者なタイポグラフィで歓迎 Bar Book Box へようこそ 青木真兵様 柿内正午様とあり、その下にこんこん堂やウチノ食堂、そのほかゆかりのお店のロゴがあしらってある。心尽くしがありがたい。テーブルがTの字に配置されており、横棒にあたる上座にゲストが座ってくださいとのことで、思ったよりも大ごとだった。後輩と井上さんとしっぽりやる感じかと思っていたら、こんこん堂やBar Book Box の常連さんなども交えての会食で、ほんもんの社交だ!と思う。こんなに正式の感じだったら眼鏡を変えてくればよかった。うちうちのやつだと思ってオフの日のやつで来てしまったことを後悔する。arbre et nid という洋食屋のデリといっしょにおいしいお酒をいただく贅沢な時間。テーブルの配置からしてプレトークのように振る舞わざるを得ず、僕と青木さんが主に話して聞いてもらうというスタイルになる。歓迎のお返しとしてはむしろこうしたほうがいいのだろうと思いながら話すのだが、みなさん楽しめただろうか。場の中心にいるというのはなかなか胆力がいるものだなと思いながら、後輩の演劇の話もちゃんと聞けて、でもやっぱりもっと聞きたかったなあ。落ち着いたら座を崩して個別で話したいと思っているうちに日付を越えそうな時間でおひらき。Rural Reading の航太さんが車で宿まで送ってくださる。車中で教えてもらった新潟でいちばんかっこいい店、TADAYOI とbinn に行ってみたくてたまらない。明日はちょっと無理そうだからまた新潟に来なくちゃな。どちらもスーパーササダンゴマシン御用達で、かれがプロレスラーたちをもてなす際にアテンドする店でもあるらしい。すてきな古町を見てしまうと川を隔てた駅前はいかにも新品然として見える。宿までの道のりが夜の街で黒服の雰囲気などを観察できた。なんかケバいおにぎりスタンドがある。あすは古町のほうを散歩しながら過ごそうかねえと相談して、シャワーを浴びて就寝。ポメラ開かなかったな。
