2026.05.12

虚勢と謙遜。読んでいた本で目に留まりつつ通り過ぎたところには、このふたつが並置されていたのだったか。どちらかあるいはどちらも、別の言葉だったかもしれない。とにかく、仕掛ける側からすればはったりをかますべきところと抑制するべきところがあり、受け取る側はいずれも真に受けつつ、話半分でいなければいけない。そういうことを考えた。誰もがとくに確信もないまま、大なり小なりの不安を抱えつつそれらしい格好を装っているものだが、その装いをまじに受け取りすぎると自分だけが「正解」を知らないでいる、などと卑屈にぎこちなくなる一方だろう。だれもが「これ合ってんのかな」と確信なんか得られないまま、えいやとある程度の決断主義で行為している。自分の頭で考えるとは、ありふれた不安を表に出さないで自分なりに振る舞うということにほかならない。自分だけの「正解」を堂々と体現すること。合わせにいくのではなく、合っていることにする。

歯医者で一年半ぶりにクリーニング。しょっぱいやつを吹きかけられながら尖ったやつでガリガリやられる。喉に水が流れ込んでえずく。うがいをすると吐き出す水が真っ赤で、やっぱり歯医者なんか来たくないよなと思う。奥歯はまた今度とのことで、来週の予約を取る。口の両端がひりひりする。おかげでながらくなんとなく気持ち悪かった口の中はさっぱりした。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。