2021.04.30(2-p.53)

わりと健康な人たちのためのなんちゃってサナトリウムみたいなところに来ている。標高も高めで、空気が気持ちいい。毎日二、三回はヨガのレッスンがあって、使ってこなかった筋肉を静かに酷使することを促される。あとはぬるめのお風呂に入ったり、マクロビだったりなんかの思想の感じられる食事をいただいたり、持ってきた『数学入門』や『モー将軍』を読んだり、ゲラを返したり、のんびり過ごしている。ゲラを返すのは毎回楽しくて、鉛筆を入れてもらうと一緒に仕上げましょう、という真摯な読み手であり伴走者としての編集者の存在の頼もしさやありがたさをしみじみと感じる。いまは寄稿の場合はこの日記と同じように連想に任せ脱線していくようでいてなんだかんだちゃんと収める、というスタイルを模索中で、しかしどうしても速さに任せ脱線しっぱなしのことも多い。そんなときそっと持ち直しを手伝ってもらえるのが心地よいし、そんな補助なしにちゃんと収める技術の必要にピシッとする気持ちもある。

なんちゃってサナトリウムでは敷地内で放し飼いの馬と触れ合えたりもして、乗馬体験もできる。僕の乗った馬は前方を行く奥さんを担当する馬と仲が悪いらしく、ふとした拍子になにかしらのきっかけで急に駆け出すものだから僕は一瞬人馬で風を切り風景の飛び去っていく感覚を味わったうえで落馬した。乗馬のみならず落馬体験もできるとは、とたいへん満足した。得難い経験というのはしておくに越したことはない。その後もう一度乗せてもらったがもう興奮してだめそうなので、別の馬にチェンジしてぐるりを巡った。二頭目の馬は草をよく食った。そんな感じでよくよく心身を養って穏やかな気持ちなわけだけれど、今夜はそうやってぼんやりしている場合でもない。ネロちゃまのアイドルデビューだからだ。そんなわけでヨガや瞑想で副交感神経優位にして寝室に戻ったあと、僕は皇帝の可愛すぎる勇姿に交感神経を活性化させ、叫ぶ。

皇帝凱旋大勝利〜〜〜!

柿内正午(かきない・しょうご)会社員。プルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、「家」の別のやり方を模索するZINE『ZINE アカミミ』などを制作。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。