2021.05.23(2-p.53)

きのうの舞台を思い出して、やっぱり劇場って好きだなあと思う。僕は『A3!』はエーステでしかなく、シトロンは古谷大和でしかない。奥さんもアプリを始めたのが後で舞台がはじめだし、音楽も大石昌良なのは舞台だけみたいだし。エーステのなにがいいかって、一本の公演で二回分の公演──劇団を描いた作品だから劇中劇の稽古と本番が描かれて、太っ腹だから二つの公演についてのエピソード──が行われるから、劇中劇と合わせて計四回M0暗転がある。M0暗転ってふつうに伝わる言葉ではないのだろうか。M0暗転とは、客入れ曲が終わって、劇伴の最初の音楽がかかって、その音がどんどん大きくなってそれに合わせて劇場の照明が落とされていって、ふっと暗闇に包まれる。あれです。奥さんはあれでほとんど反射的に泣いてしまう。奥さんはと言ったが僕もだいたい泣いてしまう。だからなんどもM0暗転があるエーステはいい。何回も盛り上がるから。

三週分くらい空いてしまった『大豆田とわ子と三人の元夫』をまとめて観る。本当にいいドラマだな。だるいシーンを大胆に省略する良心というか、良心ではないな、下世話な想像力の存在を否定せず利用していく意地悪な手腕に舌を巻くのは『カルテット』からそうだった。視聴者の下世話さを信頼して、その下世話さに語らない部分を補完させつつ、下世話な予測を一部分裏切ることで爽やかな気持ちにさせるのだからずるい。

散歩をして、途中からずっとお腹が痛くてしょげていたけれど、夕陽が『太陽にほえろ!』みたいに、落ちる寸前の線香花火の色をしていて、なんだか報われた気持ちになる。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員。プルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、「家」の別のやり方を模索するZINE『ZINE アカミミ』などを制作。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。