2022.05.07

九時ごろ起床。神戸はどうやら朝が遅いらしい。にしむら珈琲店くらいしか開いていなくて、朝はにしむら珈琲店の天下なのかもしれない。三宮駅前のカカオサンパカでは甘くないチュロスが食べられるようで、食べたい。十一時にならないと開かないので、隣の真新しいカフェでコーヒーとプリン。コーヒーはともかくプリンは予想外の美味しさ。

それから元町のアーケードを散歩して、大丸のクロークに荷物を預ける。この町の方向感覚の枠組みは山側と港側という二分にあるようだ。身軽になった僕らはまずは山側へと歩いて行く。A Spice & Beats であいがけカレー。ガツンと辛いはずなのにさらさらと食べれてしまう美味しさ。スパイスを引き立てるという草の汁をかけてくれるのだが、僕はよくわからなかった。奥さんはときめいていた。羨ましい。

それから港側へ。というか港へ。陸海空がすべて三十分圏内に収まっている町なんだね、と奥さんは感心する。日差しが暑い。きょうもとてもいい天気だ。遊覧船に乗り込むとセイバーと遠坂姉妹の三人のパネルに出迎えられて驚く。なんで? そうか、冬木じゃん、と奥さんは言う。遊覧船は三階建てと大きい。デッキに出ると見覚えのある赤い橋が見える。そうか、冬木なのか! ほら、ウェイバーくんの初恋の場所だよ、と奥さんが指差す。遊覧船は港を出て大阪湾を少し回って、戻ってくると今度はこの赤い橋をくぐる。近くで見る橋は格好よかった。

三宮に戻ってカカオサンパカ。甘くない本物のチュロスをホットチョコレートに浸しながら食べる。新婚旅行のバルセロナを思い出す。今日もよく歩いたな。山側へ港側へと二万歩は歩いた。日差しもあって二人とも眠そうだ。

大丸の地下でお土産とお弁当を見繕う。ここの案内板が港と山とで方向を示していて、神戸の方向感覚のあり方を感じたのだった。

それからバスで新神戸駅へ。途中、通りから反ワクチンの街頭演説が聞こえて来る。こんな演説が許されちゃうんだ、と奥さんはドン引き。思えば町では自民党と維新のポスターしか見かけなかった。観光客としては歩きやすくて綺麗な町だけれど、暮らしていくとなると色々あるのだろう。そういえば仙台でも改憲賛成の街頭演説がなされていた。ゴールデンウィークというのはそういう人の張り切る時期なのかもしれない。

新神戸駅でまたコインロッカーに荷物を預けて、もうひと遊び。ロープウェーに乗って山を登った。ぐんぐんと高いところへ運ばれて、夕暮れから夜へと移っていく町並みを眺めることができた。ハーブ園はもう閉まっていて展望エリアのみだったけれど、頂上の施設でもハーブの展示が充実していて思いの外楽しい。たくさんの匂いを嗅いで、敷地内を探検して発見したハンモックでゆらゆらした。ホットドッグを食べて降りる。行きも随分速かったけれど、帰りのほうがより速くて、ひゃあひゃあ言う。

適当な新幹線のチケットを取る。お弁当を広げる前に日記を書いてしまって、そのあいだに新大阪、京都があっという間に過ぎていった。

お弁当はあなご寿司詰め合わせと、ビフテキ弁当を分けっこ。どっちも美味しかった。静岡は寝飛ばすだろう。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。