2022.06.16

今日は外に出る気にならない休日。

寝室のスクリーンに投射して映画を観続けた。

まずは『メアリーの総て』。エル・ファニングにはいつも見惚れてしまう。抑制と滲ませの塩梅が毎度完璧なのだ。パーシー役のダメ男も本当に最低なのだが憎みきれないバランスで、可愛かった。史実以上に男どもに救いのない描き方なのは主題上しかたがないのかもしれないけれど、パーシーが伴走する執筆シーンも観たかった。始めのシーン、墓跡に寄り添いながら書く、その墓跡の名前を僕は知っている。バイロンの屋敷にかけられたヘンリー・フュースリーの絵を知っている。メアリ・ウルストンクラフトについての本を読んだからだ。伝記映画は周辺の知識をつけておけばおくほど楽しめるな、と改めて思う。とても好きな作品になった。

次は男の話を観るかね、と濱口竜介監督がことあるごとに言及している映画こと『ハズバンズ』を。これは巨大な怪作だった。テーブルを囲んで歌を歌うパーティのシーンの恐ろしさは、『ハッピーアワー』のワークショップを思い出す。ここに映し出されたものは、どこまで「ほんとう」なんだ? カメラの前に立つ人の感情を操作する危うさと、無軌道さに翻弄される快感。映し出される男達のおぞましさにわけもわからず震えていたら二時間過ぎていた。怖い映画だった。

お次はわかりやすく怖くて元気が出る映画を観よう『マグリナント』。終盤の種明かし以降はゲラゲラ笑いながら観ていて、ただのアクション映画になったあたりでもうどうでもよくなった。血もたくさん出て、腕や足が吹っ飛んで景気がよかった。あー楽しかった。

丸一日映画を観ていて、こういうのは久しぶりだった。こういう一日は必要だな。

夕食後、退勤した奥さんと一緒にバズ・ラーマン版『華麗なるギャツビー』。まだ観るのか。三越劇場での舞台を週末に観にいく奥さんの予習という名目で、これは二度目だ。公開当時劇場で観ている。散々な評判だったと思うし、バズ・ラーマンを好きというのはラッセンのイルカを褒めるのに似ているところがあるが、しかし僕はこの映画が、けっこう好きなのだ。ビジュアルは最高。コテコテに作り込まれた情景が目に楽しく、出演人も毎秒キメ顔で愉快。ディカプリオの演技のサイズが舞台。とにかく豪勢で、過剰で、品がなくて、うきうきする。時代に合ってないとかそういうレベルでなく、とにかく選曲のセンスが壊滅的なのもご愛嬌。デイジーたちの初登場シーンのカーテンの薄布が幾重にもはためくシーンが最高にきれい。チャーミングな映画だと思う。記憶だとギャツビー登場まで一時間くらい焦らされて、そうか、ディカプリオは特撮の怪獣みたいなものなんだな、と納得した覚えがあるのだけど、案外あっさり出てきた。花火打ち上げ以降は日記を書きながら観ていて、やっぱりシャツをぶわーって投げるシーンが大好きだな。半分くらいまで観たところで日付が変わるので、つづきはまた明日。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員。プルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、「家」の別のやり方を模索するZINE『ZINE アカミミ』などを制作。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。