2022.07.18

今日はずっと歩きながら左足の裏にチクチクした痛みがあって、夕飯前に奥さんにみてもらうと極小のガラス片が刺さっていたらしい。赤くなっているあたりを親指と人差し指で挟み込みぐーっと血と一緒に押し出すようにする、そこを奥さんにピンセットで取ってもらう。なんとか欠片を摘もうとするたび、ジャリ、ジャリ、と微かに音がする。これを書いている今すでに本当に左足だったか、右足かもしれない、と記憶が曖昧だ。今日はマッサージを受けて帰ろうと思っていたのに、体の不調はきれいになくなっていて揉まれ甲斐がないのでよした。凶悪な晴れ模様で、天気がよければ体調もいいんだよな、と何度だって新鮮に驚く。一万歩くらい歩いたはずだ。だからずいぶん奥までめり込んでいた。

いまは筋トレくらいしか自分が変わっていく様子を確かめられる遊びがなくて、このままだとムキムキになってしまうかもしれない。やたらとガジェットが欲しい。新しいおもちゃを買うとデキる人間へと自己拡張されていく錯覚が得られ、それは癖になる。しかし会社員になってもう八年とかで、目ぼしいものはほとんど買ってしまった気もするし、僕は物持ちがいいので買い替えはなかなかありえない。新しく買いたいもの、新型も出たしポメラだろうか、しかしポメラを使う気がしない。僕はパソコンであれスマホであれ書く時は書くし、そういうときはFGO にもTwitter にも検索にも気を散らさない。僕は読むのと同程度には書くことが好きだからだ。キーボードであろうとフリック入力であろうと手書きであろうとなんだってよくて、黙々と書いてさえいればそれで機嫌がいい。そして書き物はNotion に集約しているからポメラで外出しすると管理の手数が増えるだけであまりメリットを感じない。キーボードが書く道具としてはいちばん速いから好きだが、持ち運べるキーボードに六万は高い。であればMacBook Air が欲しいと思って調べると二〇万もする。持ち運べるキーボードに六万は安いかもしれない。いろいろと考えてみたのだがいま最も欲望が向きそうなのは剃刀かもしれない。『スウィーニー・トッド』に出てくるようなやつ。なんだかマスクのせいか髭が濃くなってしまって、敏感肌用のシェーバーではたまに無理が出てきた。敏感肌にいちばん優しいのはアナログの剃刀なのだといつだか誰かに教えてもらった気がするが、状況も人物もなにもかも思い出せないので夢か幻覚の類の可能性もある。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。