2023.04.07

『あまり読めない日々』の増刷したのが届いて、奥さんがさっそく荷造りしてくれる。きょうは小さめの荷物なのでレターパックが二つとクリックポストが一つ、そしてゆうパック一箱。奥さんが梱包の準備を進めるあいだに僕はコンビニでクリックポストの伝票を印刷してレターパックを買う。帰って宛名書きをして、奥さんが手際よく詰めていく。風がとても強くて気持ちがめそめそしやすいが、勢いをつけて家を出て郵便局へ。きょうはいっぺんに持っていける。本を抱えて歩いていると『フィジカル100』が思い出された。1.5トンの船を運ぶ筋肉たち。筋肉ってすごいんだな。僕は何キロくらいなのかはよくわからないが、10キロは超えていただろう本を何度か持ち運ぶだけで全身バッキバキ。

帰って作業のお供は『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』。どうも僕はこの映画の伊藤蘭がだいぶ好きだ。松村達雄の演技も、おいちゃんよりもこの教師の役がいちばんハマっていると思う。便所掃除の詩を読み上げるその声音が可笑しくも優しい。きょうは風も強いし雨だから、折々で泣いてしまった。さくらが二階の部屋の用途をなにげなく告げるその声音や、寅さんがお札にアイロンをかける横顔……

これではいけない、もっとどうでもいい映画を観ようと『キラー・ジーンズ』を流し始めると綿を摘み取る農園のシーンから始まって、敷地内に掲げられた標識に付いている企業ロゴにカメラが寄っていくと都会の店舗のバックヤードに運び込まれた段ボールに印字されたそれへと切り替わっていく、この一連だけでずいぶん丁寧で面白くって、これはナメてはいけない映画だとすぐにわかる。いちばんよかったのはインカムでやり取りするスタッフの滑稽さを際立たせるためにスプリットスクリーンの無駄遣いをするところ。大満足。

夕食の支度をしながらマ・ドンソクの『バッドガイズ』を観て、これは最初から最後まで見事に少年漫画で大はしゃぎ。マ・ドンソクはどんなピンチもピンチに見えないし、ワンパンで敵をのすのにも説得力があるからいい。質量というのはすごい。

明日のイベントのことを考えすぎると今日のうちに日記に書いてしまいそうだから意識的に他のことを考えていた。明日になったら思い切りノートを整理して、存分に話したさを盛り上げて挑もう。楽しみだなあ。遠足前の気分。持っていきたい本を選んでいたら30冊を超えてたので、どうにか20冊弱にまで絞る。『差異と重複』も10冊ほど納品するつもりだけれど、ぜんぶは持っていけないかもな。半分くらいもっていけば送料が浮くから、せめてそのくらいは運んでしまいたい。あとは、昼間に楽しいサンプルも届いたので、これも持っていきたいところ。お知らせしたいことが混雑してきて、どのタイミングでどう出すのがいいかよくわからなくなっている。いつも思いついたらすぐに告知してしまうから。広報的なことを考えるのはどうにも苦手だ。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。