事前の送り込みに間に合わなかったので久しぶりにキャリーを引いての移動。浜松町までの道のりはなかなかにたいへんで、手が震えた。何故か余裕綽々でのんびり出たので、到着が開場30分前とかで、いつもの気持ちで裏の搬入口に向かうと閉鎖されていて、今回は出店者の入り口も表立った。なんも説明読んでないじゃん。
奥さんがテキパキと設営をしている傍であわあわとしていたら始まった。『会社員の哲学』60冊くらい売れるかな、と思いながら100冊持ってきていた。万が一にも売り切れたらいやだから。僕はこういう場では絶対に売り切れを出したくない。在庫がもうないものは仕方がない。『雑談・オブ・ザ・デッド』がとうとう完売した。Ryota さんに報告すると本屋lighthouse の関口さんに伝えてくれたらしく、関口さんが「えっ!」って言ってましたよとわざわざ教えてくれたので、僕も関口さんのところに行って売れましたよ!と報告に行く。関口さんは、もう聞いたよ、と応えた。そりゃそうだろう。
『会社員の哲学』のアピールのためスーツで参加したのだが、スーツだと僕が僕だと誰も気がついてくれなかった。ON READING の黒田さんは悪戯っぽく笑って、コスプレは禁止ですよっと茶化すので、ほ、ほんものです……と返すのだが、ほんとうにそうだろうか。僕はスーツと会社員を安易に等号で結んでいたが、このスーツはむしろバンドマンとかそういう感じでもありうるのではないか。誰もが、おしゃれですか? しゅっとしてますね、とコメントしてくるが、ほんとうに会社員なんですね! とは言ってくれなかった。つまり、僕の会社員アピールは総じて失敗だった。会社員スマイルで名刺を差し出すとオルタナ旧市街さんは喜んでくださった。十七時退勤社のブースでは笠井さんが、ねえ悪用しないから写真撮っていい? と笑うので撮ってもらった。橋本さんに乃保書房に行ってきたことを羨ましがっていただけて嬉しい。いつもはわりと自分のブースに閉じがちなのだけれど、今回はがんばっていろんなブースに顔を出し、会社員だし、と名刺をどんどん配って精力的だった。名刺というのはいい。配るだけでなにかをやった気になって満足する。
きっかり60冊売れて、読みの精度に自足する。まあそれなら40冊置いてくりゃよかったのだけど。文フリは史上最多の一万人超えだったとのこと。つまり1%未満の人にしか僕は知られていないということだ。これは希望ではないか。まだまだ知られさえすれば買ってくれそうな人がいるというのはいい。ここに来ると自分の知られていなさや相手にされなさを体感できるからいい。完売なんかしてはだめだ。この規模で満足してしまう。完売すらできないという現実を何度も確かめる。とはいえ遠方から来てくださる方、本の感想を伝えてくださる方、ポイエティークRADIO を聴いてくださっている方などもたくさんいらして、おひとりおひとりが本当に嬉しかった。
帰り道、奥さんが空腹のあまり絶望。わたしいま、充電8%くらいのスマホだから。話しかけるたびに1%減るから。そっとしといて。サイゼに駆け込む。豪遊する。ふたりでジブリみたいにがつがつ食べて、ようやくニュートラルポジションに。僕はビールも飲んだし、ふたりでデザートまで食べちゃう。それでもぜんぶで三千円。なんで?
帰宅してすぐにお風呂。染み渡る。文フリの余波なのか各地の書店から追加注文があって、明日すぐ出せるように梱包など済ませておく。日記を書く前に文フリのふりかえりの録音もする。今晩配信される。日記を書きだすまでうだうだしていると、奥さんは眠たくなってしまった。僕が日記を書くあいだハイラルに行くつもりだったのに。