2023.05.30

親指の腹がじんわりと痛いような気がするのがもう長いこと続いている。とうとう小指の内側もひりついてきて認めざるをえないのだがたぶんこれはiPhone 由来の低温やけどみたいなものではないか。もう半年ほど裸のままで使っている。根本的にはバッテリーの劣化だろうから買い替えるべきなのだろうが、対症療法でスマホケースを買った。奥さんが以前使っていたMYNUS というシンプルなもので、グレーを選ぶとざらついた表面が石を思わせる。この肌理が面白くてついつい触ってしまう。目玉シールをつけようかと考える。

『哲学の教科書』を精読しながら、息抜きに『小説作法』と『忌狩怪談 闇路』をやる。カフカの話がよい。内在的に読み書くこと。

三池のほうの『十三人の刺客』を観返して、やはりこの映画の稲垣吾郎はいいなあと思う。松方弘樹も圧倒的だし、市村正親もいい。作品としてはとにかく男臭く、徹底的に女性を疎外するのだが、男どもの愚かしい社会に参与したものはすべからく泥と臓物にまみれて死んでいく。もとから排除されていたもの、途中で降りたものだけが生き延びるのだが、前者が最後まで軽やかに画面奥へと去っていくのに対し、後者は上手から下手へとヨタヨタ歩き、固く握りしめた指は硬直し刀を投げ捨てることはかなわない、もう笑っちゃうほかない。どうにも面白い。

FGO のイベントはどうにも興味が持てず、初めてテキストをスキップした。ボックスは回す。

朝からずっと頭が痛くて、薬を切らしていて絶望だった。夜にはぐったりで先にシャワーを浴びるもごはんが食べられそうにないので15分仮眠を取ってから夕食にする。しょぼくれた顔をしている奥さんを案じたら、ミラー効果よ、と言われる。奥さんがにっこりするのに合わせて笑っていたらだんだんしょぼくれから立ち直っていくようで、食べ終えて、そうしたら元気いっぱいだ! 昨晩の舟和の残りをバターでこんがり焼いてアイスクリームを添えて食べちゃう。紅茶とよく合う。

スマホケースにはやっぱり目玉を貼った。うちには目玉シールがたくさんあるし、目があったほうが可愛いから。ON READING から本が届いていて、先日のカレー屋について書いた日記を読んだ黒田さんが教えてくれた『日本のインド・ネパール料理店』だ。帯には「インド・ネパール料理店の知りたかったすべてがここにある。」とある。頼もしい。すてきな包み紙に「Just for you」という丸い銀色のシールが貼ってあるものが同封されていて、なんだろ、と開いてみると『生活フォーエバー』の手ぬぐいだ! 納品書に書き添えられたメッセージには誕生日祝いのコメントがあって感激する。すごい、すごい嬉しい。Instagram の DM からお礼を送る。納品書を四つ折りにして、『日本のインド・ネパール料理店』に挟み込む。この日記はすでにいちど公開したものだけれど、どうしても書き足したくてこの段落を書いている。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。