日中はわりあいケロッとしているのだが、二、三時間動き回るとすこし疲れたなとついつい横になってしまう。寝て起きると悪化するので寝たくないのだが寝てしまうのだから仕方がない。この、もう大丈夫かな、と期待して、やっぱりダメだった、と突き落とされるのを繰り返すと、どうせまだ治らないんでしょとふてくされるようになる。その様子を見守る奥さんは、こうして人はあらゆる希望を失っていくんだね、と眉を八の字にして同情を示した。
日中の元気なうちにちゃちゃっと半熟卵とパクチーを載せた油そばを作ってもしゃもしゃ食べる。『その謎を解いてはいけない』を読み終えて、楽しかったな、一冊読み終えられたからもうけっこう大丈夫なんじゃないかな、とうれしかったのは、幻想だった。『ロボコップ』を観て豪快な血飛沫にはしゃいだからもう絶好調なんじゃないかと確信を深めて、そのまま続けて『2』を始めたらだんだん関節がだるくなってきて眠ってしまった。起きたらやっぱり熱がぶり返していた。悪漢たちに蹂躙されたのち、大企業にサイボーグに作り替えられてしまったかのような悲哀が全身を貫いた。叫ぶこともできない。
奥さんが買ってきてくれた、ににぎの抹茶プリンと水羊羹を食べる。抹茶プリンがとってもおいしくて二人は目を丸くした。夕飯は肉じゃが。食後のデザートにはトップスのケーキもある!
家から出ないで療養していると時間の流れがまったく一定ではなく、経過のよしあしで伸び縮みする。ご飯を食べる時間だけがアンカーのようにはっきりと楽しくて、現在時刻が定められる。健康な時は本を読むときだけ時間感覚がうねるが、今のようにつねに揺らいでいるような場合はむしろ本を読んでいるとその記述が直線であることに安心するようだった。食べたあとはやたらに発汗する。もうシャワー浴びる体力なさそうなんだけどな。
せっかくのトップスのケーキだから、なにか達成してからにしよう、と録音してみたら僕はこの三日分のしゃべりたさを炸裂させるように話し続けて結局ずいぶん長くなってしまった。さあ、ケーキの時間だ! 子供靴のようなゴテゴテした箱を開けると角の取れた豆腐のような無愛想なフォルムが現れる。思わず顔を綻ばせてしばらく見惚れる。フォークで切り崩しながら食べていく。チョコレートとスポンジとナッツのそれぞれ質の違う甘さがレイヤーになって口のなかを甘い一色に染め上げる。うれしい!おいしい!どっしりした味の組み立てなのに、クリームは軽やかで、どれだけ食べても飽きが来ない。にこにこ食べ切る。はー、こんなに満たされた気持ちになるのだから、明日はもう元気なんじゃない?
