本の栞の「2023年・本の栞でよくうごいた10冊」に『差異と重複』と『会社員の哲学』の二冊が選出されており小躍りする。六月はスタンダードブックストアでのイベントの翌日に日記についてのお話し会を開催した。イベントの後は蟹の親子さんと浜へ行く散歩もしてたいへん楽しかった。関西のこの二つのお店は、今年もっとも僕の本を届けてくれたお店でもある。奥さんが今年の集計を出してくれたのでそれがわかる。僕の本は、東京の外で動いている。そのくせ僕の目は東京という一地方にべったり張り付きがちで、自分でそれが嫌だ。今年は意識的にべつの場所での活動に重きを置いた。それは東京はもういいやということでもないし、僕が東京にいるという特権性を誤魔化してもいけない。どうしたって東京にあるということを自覚したうえで、近視眼的にひとつの土地での暮らしだけを見るということを避けたいということである。本の形で複数の土地土地に置いてもらいたいというのは、それぞれの町で「いちばんの素人」として妙な存在感を放ちたいということで、特定の町のいちばんを目指しても仕方がない。偏在するそのへんの変な人、そのような存在を目指している。来年には都内在住の人でもなくなる予定なのだけれど、そうなったときにどうなるものか、すこし楽しみでもある。中心との半端な距離感、周縁からのものの考え。
僕は平日にランドセルを背負って四角な教室に通うような時分から、まったくの仲間外れというほどでもなければ、中枢にしっかりと位置を占めているわけでもない、関係の郊外的な場に収まりがちだった。そのような幼少期について話すと奥さんは決まって僕を蝙蝠野郎と罵倒する。それはその通りだと思うのだけれど、それは忸怩でもあり矜持でもあるようで、わかりやすく強くも弱くもあれないところにいるということが読み書く時つねに響いている。
春に開業した機械書房の2023年下半期ランキングでも『会社員の哲学』が堂々の一位。岸波さんの日記がダントツらしいけれど、ご自分の本だから選外とのこと。開店前に百冊仕入れてもらっていたから、ちゃんと売れていて嬉しい。今年は随分と多動で楽しかった。来年はどうなるでしょう。時評の一回目を納品。結局規定枚数の三倍書いて無理くり圧縮する形になった。このような書き方は、しかし文章をよりいい感じにする。書きたいだけ書いたら半分ほどはばっさり捨てる。そのほうがいいものにはなるのだろうと思う。そう思いつつ、年内最後の原稿は千字で足りるところをどれだけ冗漫に書けるかと言う遊びに興じている。こっちはこっちで楽しいが、読む方はたまったものじゃないかもしれない。
お風呂ではKindleで漫画。『剥かせて!竜ケ崎さん』と『マグロちゃんは食べられたい!』を続けて楽しく読んで、自分の好みのブレなさを思い知る。というか、あなたはそういうのが好きよね、アニメでしか知らないけれど『小林さんちのメイドラゴン』も好きだったし『放課後ひみつクラブ』だってそうじゃん、と奥さんに指摘されて愕然としたのだ。たしかに全部「そういうの」と言えなくもない。あまりにも異なるもの同士が隣り合う話に弱い。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』もそうだし、FGO だとキングプロテアがわかりやすいし、ネロちゃまだってこの枠に入らないこともない。そう、僕はこういうのが好き。
